令和07年度 第110回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 204,205,206,207

Pin Off  未ブックマーク   
問 204  正答率 : 60.0%
問 205  正答率 : 83.3%
問 206  正答率 : 64.4%
問 207  正答率 : 61.1%

 国家試験問題

国家試験問題
体育の新任教諭が初めてプール水の遊離残留塩素とpHを測定することになった。学校薬剤師は測定にあたっての留意点について新任教諭から問合せを受けた。

問204(物理・化学・生物)
pH計に関する記述として正しいのはどれか。2つ選べ。

1 参照電極にはガラス電極を用いる。


2 指示電極の電位はネルンストの式に従う。


3 測定されるpHは温度の影響を受けない。


4 校正されたpH計の電位を基準としてプール水のpHが測定される。


5 参照電極の内部液には飽和塩化アンモニウム水溶液が用いられる。




問205(実務)
学校薬剤師の回答として適切なのはどれか。2つ選べ。

1 測定時期は、遊離残留塩素とpHの両方ともプール使用後です。


2 遊離残留塩素とpHの両方とも少なくともプール内の対角線上のほぼ等間隔の3ヶ所から採水して測定してください。


3 遊離残留塩素濃度は、塩素剤の消毒効果を表す指標です。


4 入泳者が持ち込んだ汚れや毛髪が原因で遊離残留塩素濃度が高くなります。


5 pHの値によらず塩素剤の消毒効果は変わりません。




問206(衛生)
その後、同教諭が遊離残留塩素を測定したところ、基準値を下回っていたため、消毒剤を追加することとなった。屋内プールの水質管理を担当していた別の教諭が、水処理に使用される消毒剤Aと凝集剤Bを誤って混合したため、ガスCが発生した。消毒剤A、凝集剤B及びガスCの組合せのうち、該当するのはどれか。1つ選べ。
スクリーンショット 2025-07-09 12.40.06.png


問207(実務)
屋内プールで刺激臭がするという連絡を受けて駆けつけた学校薬剤師が、検知管と真空方式ガス採取器を用いてガスCの濃度を測定することになった。ガスCの測定に用いられる検知管の取扱い及び測定方法に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。

スクリーンショット 2025-07-09 12.42.10.png

1 冷蔵庫で保存した検知管は、取り出したら直ちに使用することができる。


2 両端を折り取ったのちに使用しなかった検知管は、アルミホイルに包んで冷蔵庫で保存することができる。


3 検知管の変色層の先端面が斜めの場合には、中間点を濃度として読み取る。


4 真空方式ガス採取器は、漏れがないことを確認したのちに、試料の採取に用いる。


5 真空方式ガス採取器で採取した空気を検知管に通す。

 解説動画作成を要望!

 解答を選択

問 204    
問 205    
問 206    
問 207    

 e-REC解説

問204 解答 2、4

1 誤
pH計は水素イオン濃度によって電位が変化する指示電極と電位の基準となる参照電極から構成される電気化学的な測定機器であり、指示電極にはガラス電極が、参照電極には銀−塩化銀電極などが用いられる。

2 正
指示電極の電位は、以下のネルンストの式に従う。

3 誤
測定されるpHは温度の影響を受ける。

4 正
pH計を使用する際には、正確なpHが測定できるように校正(標準緩衝液を用いて測定値の数値のズレを調整すること)を行う必要があるため、プール水のpHは、校正されたpH計の電位を基準として測定される。

5 誤
参照電極に用いられる銀−塩化銀電極の内部液には、電極の電位を安定に保つために飽和塩化カリウム水溶液などが用いられる。


問205 解答 2、3

1 誤
遊離残留塩素は、プールの使用前及び使用中1時間ごとに1回以上測定する。また、pHは、プールの使用前に1回測定測定する。

2 正
プール水のpHと遊離残留塩素を測定の場合、検体の採水場所は、プール全体の水質が把握できる場所とし、長方形のプールではプール内の対角線上におけるほぼ等間隔の位置3ヶ所以上の水面下20 cm付近とされている。なお、遊離残留塩素については、循環ろ過装置の取水口付近も規定されている。

3 正
遊離残留塩素濃度はプール水の消毒管理の指標であり、感染症予防等プールの衛生管理において重要な検査項目である。なお、水泳プールに係る学校環境衛生基準では、遊離残留塩素濃度は0.4 mg/L以上であること、また、1.0 mg/L以下であることが望ましいとされている。

4 誤
プール水中の遊離残留塩素は、紫外線による分解や入泳者の持ち込む汚れや毛髪などにより消費されるため濃度が低くなる。そのため、塩素剤を投入し、遊離残留塩素濃度を一定以上維持する必要がある。

5 誤
水に塩素剤(Cl2)を加えると次亜塩素酸(HClO)および次亜塩素酸イオン(ClO)を生じ、消毒効果はHClOの方が高い。なお、水のpHによってHClO及びClOの存在比が異なるため、塩素剤による消毒効果はpHによる影響を受けることになる。pH4付近ではほとんどがHClOとして存在するため、塩素剤による消毒効果はpH4付近が最も高い

スクリーンショット 2025-07-09 12.53.53.png



問206 解答 3

アルカリ性の消毒剤である次亜塩素酸ナトリウムと、酸性の凝集剤であるポリ塩化アルミニウムや硫酸アルミニウムを混合すると塩素ガスが発生する。なお、水泳プールに係る学校環境衛生基準では、塩素剤の種類は次亜塩素酸ナトリウム液、次亜塩素酸カルシウムまたは塩素化イソシアヌル酸のいずれかを用いることと規定されている。


問207 解答 3、4

検知管は、特定の物質と反応して変色する化学薬品を内包したガラス管である。使用時には両端を折って、真空方式ガス採取器に接続後、ハンドルを引くことで測定したいガスを検知管内に吸引する。吸引したガスが検知管内で化学薬品と反応することで変色した度合いからガスの濃度を測定することができる。

1 誤
冷蔵庫で保存した検知管を低温の状態のままで測定すると、導入されたガスが冷却されて正しい測定値が得られない場合があるため、測定環境と同じ温度になるように時間を置いてから使用する。

2 誤
検知管は化学反応性が高いため、一度開封(両端を折った)したものは使い切るのが原則であり、再使用や冷蔵保存は不可とされている。

3 正
検知管の変色層の先端面が斜めの場合は、斜めになった部分の中間点を濃度として読み取る。

4 正
真空方式ガス採取器を使用する際は、使用前に器具の気密性(漏れの有無)を確認してから使用する必要がある。なお、漏れがあると吸引量が不正確となり、測定値に大きな誤差が生じる。

5 誤
測定したいガスは直接検知管内に送られるため、真空方式ガス採取器で採取した空気を検知管に通すわけではない。

 Myメモ - 0 / 1,000

e-REC 過去問解説システム上の [ 解説 ] , [ 解説動画 ] に掲載されている画像・映像・文章など、無断で複製・利用・転載する事は一切禁止いたします