令和07年度 第110回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 208,209

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問 208  正答率 : 86.5%
問 209  正答率 : 49.6%

 国家試験問題

国家試験問題
84歳男性。息子と二人暮らし。長年、近隣のクリニックで高血圧症と頻脈、アレルギー性鼻炎のため、処方1による薬物治療を受けていた。

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1年前の受診で、もの忘れが多く、その日の曜日が分からなくなることがたまにあり、付き添いの息子が処方医に相談したところ、神経内科の専門医を紹介され、そこで認知症と診断された。リバスチグミンテープ4.5 mgで治療を開始し、漸増の後、現在は処方1とともに処方2の薬剤の使用を継続している。

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今回来局した息子から、「医師には言い忘れたが、最近、服薬時や飲食・飲水時に、むせの頻度が以前より高くなったので、誤嚥性肺炎になることを心配している」との相談があった。


問208(実務)
息子の相談に対するアドバイスとして、以下のうち適切なのはどれか。2つ選べ。

1 誤嚥性肺炎の原因になるため、歯磨きは控えてください。


2 脱水時の水分補給には、経口補水液のゼリータイプをお勧めします。


3 処方1の薬剤を55℃程度のお湯に崩壊・懸濁させ、とろみをつけて服用させてください。


4 むせたときは、息子さんの判断で、以降は処方1の薬剤の服用を中止してください。


5 処方2の薬剤を内服薬のドネペジル塩酸塩錠に変更するように医師に提案できます。




問209(物理・化学・生物)
処方2に含まれる薬物は、下図のように、アセチルコリンエステラーゼの活性中心のセリン残基と反応し、共有結合中間体を形成する。

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共有結合中間体の構造として、正しいのはどれか。1つ選べ。

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問 208    
問 209    

 e-REC解説

問208 解答 2、3

1 誤
口腔内細菌が増殖した状態で誤嚥をすると、誤嚥性肺炎が起こりやすい。口腔ケアは、誤嚥をしても肺炎にならないようにするために推奨される行為である。歯磨きを控えることは誤嚥性肺炎のリスクをむしろ高める。

2 正
高齢者は脱水リスクが高く、口腔乾燥を原因とした誤嚥予防のためにも適切な水分補給が重要である。ゼリータイプの経口補水液は、とろみがついており嚥下しやすいため、誤嚥のリスクを減らしつつ電解質と水分を補給できる。

3 正
ビソプロロールフマル酸塩錠、エバスチン錠は共に懸濁可能な製剤であり、誤嚥を予防するために55℃程度のお湯に崩壊・懸濁させ、とろみをつけて服用させるのは適切。

4 誤
医師に相談なく、薬剤の服用を中止するべきではない。服用が困難な場合は医師または薬剤師に相談するよう指導する。

5 誤
リバスチグミンテープは嚥下が困難な患者に向いた剤形であり、本患者のようにむせの訴えがある状況ではむしろ推奨される剤形である。内服に変更することは、誤嚥のリスクが上がる可能性があり、不適切である。


問209 解答 1

アセチルコリンエステラーゼを含むエステラーゼ(エステル加水分解酵素)はエステル結合のカルボニル(C=O)部分を求核攻撃することで加水分解を開始する。その後、エステル結合が切断されてセリン残基がカルバモイル化された選択肢1が生成する(下図参照)。

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