令和07年度 第110回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 214,215

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問 214  正答率 : 53.1%
問 215  正答率 : 65.4%

 国家試験問題

国家試験問題
52歳男性。身長167 cm、体重56 kg。最近、右首のくぼみあたりに腫れやしこりがあり、近医を受診した。医師の診察により、頸部リンパ節腫大を認めたため、医師は精査目的で地域医療支援病院の血液内科を紹介した。病変部位の生検の結果、ホジキンリンパ腫と診断された。3日後からABVD療法を開始する予定である。

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問214(実務)
病棟カンファレンスに参加する際、この治療に関して担当薬剤師が留意する情報として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 処方1の薬剤は過剰な塩化物イオンにより分解するため、生理食塩液との混和を避けること。


2 処方2の薬剤の累積投与量の増加に伴い、肺機能の低下に注意すること。


3 処方3の薬剤は非壊死起因性抗がん剤であるため、薬液が血管外へ漏出しても投与を継続すること。


4 処方4の薬剤は光に不安定であり、光分解によって血管痛の原因となる物質が生じるため、点滴容器及び経路全体を遮光して投与すること。


5 ABVD療法の催吐性リスクは軽度のため、ドンペリドンの嘔気時服用で対処すること。




問215(物理・化学・生物)
処方4の薬物はプロドラッグであり、代謝物がDNAと共有結合を形成して抗腫瘍効果を示す。以下の代謝経路に示す化合物のうち、DNA塩基による求核置換反応を受け、薬効を示す活性本体として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。

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1 A


2 B


3 C


4 D


5 E

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問 214    
問 215    

 e-REC解説

問214 解答 2、4

1 誤
過剰な塩化物イオンにより分解するため、生理食塩液との混和を避ける必要がある代表的な薬剤は、シスプラチン製剤である。なお、ドキソルビシン塩酸塩は生理食塩液を用いて溶解することができるが、難溶性の凝集体の形成(スタッキング現象)を防ぐために素早く撹拌する必要がある。

2 正
ブレオマイシン塩酸塩は累積投与量の増加に伴い、間質性肺炎や肺線維症などの肺症状の発現率の増加が認められているため、肺機能の低下に注意する。

3 誤
ビンブラスチン硫酸塩は壊死起因性抗がん剤に分類される薬剤であり、薬液が血管外へ漏出すると水疱や潰瘍をもたらす可能性や、組織傷害・壊死のような重度な副作用が生じる可能性などがあるため、血管外へ漏出した場合は直ちに投与を中止して、血管外漏出時の対応を行う必要がある。

4 正
ダカルバジンは光分解によって血管痛を生じさせるため、点滴容器及び経路全体を遮光して投与する必要がある。

5 誤
ABVD療法に含まれるダカルバジンは高度催吐性リスクの抗がん剤であるため、ホスアプレピタント、パロノセトロン、デキサメタゾン、オランザピンなどの4剤併用療法で対処する必要がある。


問215 解答 4

ダカルバジンは、生体内代謝で生じる活性本体のメチルジアゾニウムイオン(H3C-N≡N)がDNAと共有結合を形成することで抗腫瘍効果を示すプロドラッグのアルキル化薬である。

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