令和07年度 第110回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 228,229

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問 228  正答率 : 43.2%
問 229  正答率 : 56.0%

 国家試験問題

国家試験問題
76歳男性。下肢にしびれを感じて外科を受診し、6ヶ月にわたって通院していたが、その間、腎機能が徐々に低下していたため内科を紹介された。血液検査結果により慢性腎臓病と診断され、外来で経過を観察することになった。

(外来時の身体所見)
身長168 cm、体重74 kg、体温36.5℃、血圧142/85 mmHg

(検査値)
BUN 40 mg/dL、血清クレアチニン1.4 mg/dL、eGFR 42 mL/min/1.73 m2
血清アルブミン2.6 g/dL、空腹時血糖81 mg/dL、HbA1c 5.6%、
Na 138 mEq/L、K 4.5 mEq/L、ALT 35 IU/L、尿中アルブミン100 mg/day、
尿アルブミン/クレアチニン比83.3 mg/gCr、尿タンパク(+)、
尿タンパク/クレアチニン比0.25 g/gCr(簡易尿検査)

問228(実務)
この患者の慢性腎臓病の重症度を分類する上で、必要な検査データはどれか。2つ選べ。

1 BUN


2 血清アルブミン


3 eGFR


4 尿アルブミン/クレアチニン比


5 尿タンパク/クレアチニン比




問229(衛生)
この患者が内科で出された処方箋を持って家族と来局した。この患者に服薬指導した際に、家族から食生活に関する質問があり、食塩の摂取を控えるよう助言した。薬剤師が腎臓病に関連するリスク因子について論文検索したところ、食塩摂取量と末期腎不全(End Stage Renal Disease:ESRD)発症との関連性について検討した論文があった。その論文においては、慢性腎臓病の患者500人のうち、100人がESRDを発症し、食塩6.0 g/日以上を摂取していた患者は85人であった。また、ESRDを発症した100人のうち、食塩6.0 g/日以上を摂取していた患者が20人であった。
食塩摂取(6.0 g/日以上)によるESRD発症のオッズ比として最も近い値はどれか。1つ選べ。

1 1.3


2 2.3


3 3.7


4 4.1


5 4.9

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問 228    
問 229    

 e-REC解説

問228 解答 3、5

慢性腎臓病(CKD)とは、腎疾患が慢性的に持続する病態を全てとらえる疾患概念であり、以下のように定義されている。

①尿異常所見、画像診断、血液検査、病理診断で腎障害の存在が明らか(特に蛋白尿の存在が重要)
②GFRが60 mL/分/1.73 m2未満
上記の①、②のいずれか又は両方が3ヶ月以上持続する場合、CKDと診断する。

また、CKDの重症度は原疾患・GFR区分・蛋白尿区分を合わせたステージにより評価される。GER区分はG1〜G5に、蛋白尿区分はA1〜A3に区分される。なお、蛋白尿区分については、原疾患によって用いる検査データが異なる。原疾患に糖尿病関連腎臓病を有する場合は、尿アルブミン定量(mg/日)や尿アルブミン/クレアチニン比(mg/gCr)を用い、原疾患に高血圧性腎硬化症、腎炎、多発性嚢胞腎、移植腎などを有する場合は、尿タンパク定量(g/日)や尿タンパク/クレアチニン比(g/gCr)を用いる。(下表参照)
本患者は、空腹時血糖81 mg/dL、HbA1c 5.6%であることから糖尿病ではないと判断できるため、eGFRと尿タンパク/クレアチニン比によりCKDの重症度を分類する。
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問229 解答 1

オッズ比とは、リスク因子と疾病の関連性の強さを表す指標であり、患者群の要因曝露のオッズと対照群の要因曝露のオッズとの比から求められる。

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論文の情報から、食塩摂取(6.0 g/日以上)によるESRD発症のオッズ比を求めると次のようになる。

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