令和07年度 第110回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 268,269

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問 268  正答率 : 63.2%
問 269  正答率 : 57.1%

 国家試験問題

国家試験問題
68歳女性。身長155 cm、体重50 kg。下腿浮腫及び尿の泡立ちを自覚するようになり、近医を受診した。タンパク尿及び低アルブミン血症を認め、ネフローゼ症候群が疑われ、精査加療のため総合病院に入院となった。検査の結果、以下の治療を開始した。

(入院時検査値)
血圧142/92 mmHg、血清総タンパク5.1 g/dL、血清アルブミン2.6 g/dL、
BUN 38 mg/dL、血清クレアチニン1.0 mg/dL、総コレステロール338 mg/dL、
LDL-C 248 mg/dL、Na 142 mEq/L、K 4.2 mEq/L、尿タンパク(3+)

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1週間後、浮腫の軽減が不十分であったため、多職種によるカンファレンスで薬剤師に意見が求められた。

問268(実務)
薬剤師がカンファレンスで提案する内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 ヒドロクロロチアジドの追加


2 プレドニゾロンの中止


3 フロセミドの増量


4 カルペリチドの追加


5 ピタバスタチンの減量




問269(薬剤)
治療開始後、ステロイド抵抗性との診断を受け、シクロスポリンカプセルが追加されることになった。そのため、薬剤師は処方2の薬剤についてフルバスタチンへの変更を医師に提案した。その理由として正しいのはどれか。1つ選べ。

1 シクロスポリンがピタバスタチンの消化管吸収を阻害するため。


2 シクロスポリンがピタバスタチンの肝取り込みを阻害するため。


3 ピタバスタチンがシクロスポリンの代謝を阻害するため。


4 ピタバスタチンがシクロスポリンの尿細管分泌を阻害するため。


5 シクロスポリンがピタバスタチンの尿細管再吸収を阻害するため。

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問 268    
問 269    

 e-REC解説

問268 解答 1、3

設問文より、本患者はネフローゼ症候群である。この患者に対して、ネフローゼ症候群に対する免疫抑制療法としてプレドニゾロン、浮腫の軽減のためにフロセミド、高コレステロール血症に対してピタバスタチンCaが処方されている。
一週間経過したのち、浮腫の改善が不十分であることからフロセミドの増量もしくは利尿薬の追加が適切である。

1 正
ヒドロクロロチアジドはチアジド系利尿薬であり、腎性浮腫の治療に用いられる。よって、ヒドロクロロチアジドの追加は適切である。

2 誤
プレドニゾロンは、ネフローゼ症候群に対する治療薬のため、中止は不適切である。

3 正
本患者は浮腫の軽減が不十分であるため、フロセミドの増量は適切である。

4 誤
カルペリチドは急性心不全に対する治療薬であるため、カルペリチドの追加は不適切である。

5 誤
今回の職種カンファレンスは浮腫の軽減を目的として行われている。ピタバスタチンは、本患者のLDL改善のために処方されており、減量は不適切である。


問269 解答 2

ピタバスタチンは、肝臓に存在するトランスポーターの一種であるOATP1B1を介して肝細胞内に取り込まれる。一方、追加処方されたシクロスポリンは肝臓のOATP1B1阻害作用を有している。そのため、ピタバスタチンとシクロスポリンを併用すると、シクロスポリンによりピタバスタチンの肝取り込みが阻害され血中濃度が上昇する。その結果、横紋筋融解症などの副作用が発現しやすくなるため併用が禁忌とされている。なお、シンバスタチンとシクロスポリンの併用は、急激な腎機能悪化に伴う横紋筋融解症があらわれる恐れがあるため併用注意である。

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