令和07年度 第110回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 276,277

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問 276  正答率 : 47.0%
問 277  正答率 : 62.3%

 国家試験問題

国家試験問題
68歳女性。15年前、乳がんにより右乳房の切除術を受けた。再発なく経過していたが、3年前に腰痛が出現し、骨転移、胸膜転移及び右胸水を認めたため、再発と診断された。オピオイドによる疼痛管理が開始され、1年前からは緩和医療に移行し、処方1及び処方2の薬剤を使用していた。

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その後、皮膚に対する副作用が強く出現したため、処方1の薬剤の貼付部位の変更や保湿を行ったが改善されず、処方1を処方3に変更した。

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問276(薬剤)
処方1及び処方3の薬剤に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 処方1の薬剤は、定常状態で薬物を0次放出する。


2 処方1の薬剤の1枚当たりの有効成分含量は、フェンタニルに換算して2.55 mgである。


3 処方1の薬剤からの有効成分の吸収量は、貼付部位の温度が上昇すると増大する。


4 処方3の薬剤は、シングルユニット型のリザーバー型製剤である。


5 処方3の薬剤は、初回分を処方1の薬剤の剥離直後に服用する。




問277(実務)
処方3の薬剤に変更後、持続痛は適切に管理されていた。しかし、6ヶ月を過ぎた頃、突出痛に対する処方2の薬剤の効果が不十分となった。医師は、処方2の薬剤の投与量を増量したが、服用後に不快な眠気が続くようになったため、処方2を処方4に変更した。

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薬剤師が患者に伝える内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 処方2の薬剤に比べ作用の発現が速いので、突出痛に対し迅速に対応できる。


2 最小用量から開始し、1回の最適量は、症状に応じて医師が段階的に調節する。


3 痛みが強いときは、錠剤を噛み砕いてから舌下におく。


4 口の中が乾燥している場合は、口に水を含み、含んだ水で溶かすように使用する。


5 突出痛に加え、持続性疼痛が増強されたときにも使用する。

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問 276    
問 277    

 e-REC解説

問276 解答 2、3

処方1と処方3の薬剤は、ともに放出制御型製剤である。処方1は薬物が膏体に分散していることからマトリックス型の経皮投与製剤であり、処方3はヒドロキシプロピルセルロースを用いていることから、水溶性マトリックス型の経口投与製剤である。

1 誤
処方1の薬剤は、マトリックス型の経皮投与製剤であり、薬物の放出速度はマトリックス内の薬物分子の拡散速度で決まるため、定常状態で薬物を0次放出するわけではない。

2 正
注1より、フェンタニルの塩係数は1.57であり、フェンタニル1 mgに対するフェンタニルクエン酸塩が1.57 mgに相当することを示す。このことから、処方1の薬剤の1枚当たりの有効成分含量は、フェンタニルクエン酸塩として4 mgなので、フェンタニルに換算すると2.55 mgである。

3 正
処方1の薬剤からの有効成分の吸収量は、発熱や熱い温度での入浴などにより貼付部位の温度が上昇すると増大する。

4 誤
処方3の薬剤は、シングルユニット型のマトリックス型製剤である。

5 誤
処方1から処方3の薬剤に変更する場合の初回服用は、処方1の薬剤の剥離直後は避け、フェンタニルの血中濃度が適切な濃度に低下するまでの時間をあけてから開始することとされている。これは、フェンタニルの血中濃度が50%に減少するまで17時間以上かかるため、すぐに処方3を服用するとオピオイドの作用が強く発現する可能性があるからである。


問277 解答 1、2

1 正
処方4の薬剤は舌下錠であり、処方2の薬剤に比べ吸収速度が速く作用の発現が速い。これにより突出痛に対し迅速に対応できるため、患者に伝える内容としては適切である。

2 正
処方4の投与量は、患者毎に最小用量の100 µgから開始し、1回の最適量は、症状に応じて医師が段階的に調節するため、患者に伝える内容としては適切である。

3 誤
処方4の口腔粘膜からの吸収は、錠剤を噛み砕いてから舌下におくと、口腔粘膜からの吸収が低下し、バイオアベイラビリティが低下する可能性があるため、患者に伝える内容としては不適切である。

4 誤
処方4の薬剤は、水なしで服用することとされているが、口の中が乾燥している場合は、服用前に口腔内を水で湿らせても良い。ただし、口に水を含み、含んだ水で溶かすように使用すると、吸収に影響を及ぼす可能性があるため、患者に伝える内容としては不適切である。

5 誤
処方4の薬剤は、持続性疼痛が適切に管理されているがん患者における突出痛に対してのみ使用することとされているため、患者に伝える内容としては不適切である。

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