令和07年度 第110回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 296,297

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問 296  正答率 : 78.9%
問 297  正答率 : 72.7%

 国家試験問題

国家試験問題
25歳女性。既婚。子供を欲しいと思っている。2ヶ月ほど前から屋外での作業の後、微熱、疲労感、関節痛及び両頬に紅斑が現れたため、市販の感冒薬と解熱鎮痛薬で様子を見ていた。3日前から38℃台の発熱と下肢の浮腫、冷たいものを持つと両手指のしびれ・蒼白現象などが出現したため、総合病院を受診したところ、精査目的で入院となった。
血液検査結果は以下のとおりであった。

(検査値)
白血球2,800 /µL、赤血球400×104 /µL、血小板9.3×104 /µL、
血中総ビリルビン0.6 mg/dL、ALT 26 IU/L、AST 15 IU /L、
BUN 45 mg/dL、血清クレアチニン2.0 mg/dL、抗核抗体640倍、
抗Sm抗体8倍、尿タンパク(2+)

問296(病態・薬物治療)
この患者の病態に関する記述として正しいのはどれか。2つ選べ。

1 関節リウマチの典型的な初期症状が発現している。


2 発症には、主に細胞性免疫(Ⅳ型アレルギー)が関与する。


3 検査結果より、ループス腎炎は否定できる。


4 手指にRaynaud(レイノー)現象が認められる。


5 粘膜症状や精神神経系症状など多様な全身症状が現れることがある。




問297(実務)
その後、この患者に対して、以下の処方で治療が開始されることになった。

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この患者に対する入院中から退院時の服薬指導において、病棟薬剤師が患者に伝える内容として適切なのはどれか。2つ選べ。

1 重篤な臓器障害が発症した場合は、ステロイドパルス療法として1クール7日間点滴投与すること。


2 ステロイド抵抗性を示した場合は、免疫抑制薬が追加されること。


3 退院後の維持療法では、同用量のプレドニゾロンが用いられること。


4 屋外での作業時には日よけをすること。


5 妊娠は、病状に影響しないこと。

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問 296    
問 297    

 e-REC解説

問296 解答 4、5

本症例の患者は、以下の点より全身性エリテマトーデス(SLE)に罹患していると推測される。
・25歳の若年女性
・抗核抗体640倍、抗Sm抗体陽性
・両頬の紅斑(蝶形紅斑)がみられる
・両手指のしびれ、蒼白現象などのRaynaud(レイノー)現象がみられる

1 誤
蝶形紅斑やレイノー現象など、全身性エリテマトーデス(SLE)に典型的な初期症状が発現している。

2 誤
SLEの発症には、主にⅢ型アレルギー(体液性免疫)が関与している。

3 誤
検査結果より、BUN 45 mg/dL、血清クレアチニン2.0 mg/dLと共に高値(基準値:BUN 8〜20 mg/dL、血清クレアチニン0.5〜1.0 mg/dL)を示しており、尿タンパクも認めていることから、ループス腎炎が強く疑われる。

4 正
前記参照

5 正
SLEは多臓器障害性の慢性炎症性疾患であり、皮膚・粘膜症状や精神神経系症状など多様な全身症状が現れることがある。


問297 解答 2、4

1 誤
重篤な臓器障害(重度のループス腎炎など)が発症した場合はステロイドパルス療法を行うが、通常はメチルプレドニゾロン大量静注(1000 mg/日)を1クール3日間継続する。

2 正
ステロイドの効果が不十分(ステロイド抵抗性)の場合には、ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミドなどの免疫抑制薬を追加併用することがある。

3 誤
退院後の維持療法では、ヒドロキシクロロキンなどを服用しながら、ステロイドは徐々に減
量していく。そのため退院後、プレドニゾロンは同用量では用いない。

4 正
SLEは紫外線曝露により全身症状が悪化するおそれがあるため、日よけを行うことは重要である。

5 誤
SLEは妊娠により病状が悪化するおそれがある。また、抗リン脂質抗体症候群を合併した場合には、流産のリスクも増大する。そのため、SLE患者では病態が安定してから妊娠を計画するのが望ましい。

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