令和07年度 第110回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 302,303

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問 302  正答率 : 59.1%
問 303  正答率 : 60.3%

 国家試験問題

国家試験問題
75歳男性。慢性胃炎の既往がある。2年前に脳梗塞を発症し、それ以来、処方1及び処方2の薬剤を継続的に服用している。

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咳と嗄声が続き、血痰を認めたため近医を受診し、胸部X線で右肺腫瘤を指摘された。総合病院呼吸器内科を紹介受診し、入院して精査した結果、Stage ⅣBの非小細胞肺がん(腺がん)と診断された。遺伝子検査も実施され、EGFR遺伝子変異陽性と判明した。パフォーマンスステータス(PS)1。患者に喫煙歴はなく、機会飲酒のみ。外来通院治療を強く希望したため、ゲフィチニブ(処方3)での治療を開始することになり、処方1、処方2とも総合病院で一括して処方することになった。

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状態が安定したら退院し、処方1〜3の薬剤での治療を継続する予定である。

問302(病態・薬物治療)
この患者の病態と治療に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 肺野部に発生することが多いがんである。


2 発症前と同じ日常生活が制限なく行える。


3 他臓器に遠隔転移している。


4 手術での根治切除が可能である。


5 腫瘍マーカーとして、SCC抗原(squamous cell carcinoma related antigen)が用いられる。




問303(実務)
処方3の開始にあたり、病棟薬剤師の対応として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 ゲフィチニブによる手足症候群を予防するため、レボフロキサシンの追加を医師に提案する。


2 レバミピドをオメプラゾールに変更するよう医師に処方提案する。


3 プロトロンビン時間が延長する可能性があるので、ワルファリンカリウムの用量調節を医師に提案する。


4 退院後の服薬時に息切れ、呼吸困難、発熱などの症状が現れたらすぐに受診するよう、患者に説明する。


5 ゲフィチニブの効果を減弱させる可能性があるため、グレープフルーツジュースの摂取を避けるよう患者に説明する。

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問 302    
問 303    

 e-REC解説

問302 解答 1、3

1 正
本患者が診断された非小細胞肺がん(腺がん)は肺野部に好発する。なお、小細胞がんや非小細胞がん(扁平上皮がん)は肺門部に好発する。

2 誤
本患者はパフォーマンスステータス(PS)1であり、歩行可能で軽作業や座っての作業が可能な状態であるが肉体的に激しい活動は制限される。なお、パフォーマンスステータス(PS)0は日常生活が制限なく行われる状態である。

3 正
本患者はStage ⅣBの非小細胞肺がん(腺がん)と診断されており、TNM分類における多臓器への遠隔転移を伴うM1の状態である。

4 誤
一般的に、Stage ⅣBの転移が認められるがんにおいては手術療法における根治は困難であり、緩和ケアを中心とした薬物治療が主体となる。

5 誤
本症例のような腺がんの腫瘍マーカーには、CEA(carbohydrate antigen)などがある。なお、SCC抗原(squamous cell carcinoma related antigen)は、扁平上皮がんの腫瘍マーカーである。


問303 解答 3、4

1 誤
手足症候群の予防のために、保湿を目的とした尿素含有軟膏やヘパリン類似物質含有軟膏などの保湿剤を使用する。予防を目的としたレボフロキサシンなどの抗菌薬の提案は適切ではない。

2 誤
オメプラゾールは胃酸分泌を抑制しゲフィチニブの吸収が低下するおそれがあるため、レバミピドからオメプラゾールへの変更提案は適切ではない。

3 正
ゲフィチニブとワルファリンを併用すると、ワルファリンの代謝が阻害され血中濃度が上昇し、プロトロンビン時間の延長をきたす可能性があるため、ワルファリンの用量調節の提案は適切である。

4 正
ゲフィチニブの重大な副作用に間質性肺炎があるため、息切れ、呼吸困難、発熱などの症状が現れたら直ちに受診するよう説明する。

5 誤
グレープフルーツジュースを摂取すると、ゲフィチニブの代謝が阻害され血中濃度が上昇するおそれがあるため、グレープフルーツジュースの摂取を避けるよう説明する。

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