平成28年度 第101回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 304,305,306,307

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問 304  正答率 : 58.3%
問 305  正答率 : 88.6%
問 306  正答率 : 65.6%
問 307  正答率 : 93.6%

 国家試験問題

国家試験問題
64歳男性。BMI 28.5。糖尿病で近医に通院中であった。全身倦怠感を訴え、浮腫も認められたため精査目的で入院となった。入院時の持参薬と検査データは以下の通りである。
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問304(法規・制度・倫理)
病棟の担当薬剤師は、入院直後にこの患者と面談し、持参薬と服薬状況を確認した。薬の飲み残しが多かったため、薬剤師が治療についての考えを聴いたところ、次のような発言があった。
「ちゃんとやらなければならないことは分かっていますし、自分なりにやろうと努めていますが、なかなか実践できません。」
この発言から、男性は、行動変容ステージモデルのどの段階にあると考えられるか。適切なのを1つ選べ。

1 無関心期
2 関心期
3 準備期
4 実行期
5 維持期


問305(実務)
検査データに基づいて、薬剤師は薬物治療のアセスメントを行った。以下の検査データのうち、正常値の範囲に入っていないのはどれか。2つ選べ。

1 HbA1c
2 血圧
3 LDL-C
4 血清カリウム
5 TG


問306(実務)
この患者の検査データ及び病態を考慮し、薬剤師が医師に変更あるいは追加を提案する治療法として、適切なのはどれか。1つ選べ。

1 グリメピリド及びメトホルミンの増量
2 カリウム製剤の追加
3 フロセミドの追加
4 コレスチラミンの追加
5 ベザフィブラートの追加


問307(病態・薬物治療)
この患者は、ある臓器の障害により浮腫を生じていたが、その後、同じ臓器の障害による貧血を生じた。この貧血の機序として、正しいのはどれか。1つ選べ。

1 トランスフェリンの産生が抑制されるため。
2 血尿が生じるため。
3 エリスロポエチンの分泌が減少するため。
4 内因子の分泌不全が起こるため。
5 ヘモグロビンの消費が増加するため。

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問 304    
問 305    
問 306    
問 307    

 e-REC解説

問304 解答 3

行動変容ステージモデルに関する問題である。薬剤師は患者とのコミュニケーションの中で、患者の病気や治療への解釈を引き出し、患者が行動変容ステージモデルのどの段階にあるのか把握することで、その患者が行動を起こすかどうかの予測等を行なうことができる。行動変容ステージモデルでは、人が生活習慣等を変える場合は、「無関心期」、「関心期」、「準備期」、「実行期」、「維持期」の5つのステージを通ると考えており、それぞれのステージを次に示す。
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患者の発言の「自分なりにやろうとは努めていますが、なかなか実践できません。」という部分から、心の準備はできており、治療に取り組もうとする意欲が見られるが、まだ実践できていないことが分かるため、患者は行動変容ステージモデルの「準備期」の段階にあると判断できる。


問305 解答 1、2

患者は、「糖尿病で近医に通院中であった。」と記載があることから糖尿病の治療中であることがわかる。しかし、検査データでは、空腹時血糖とHbA1cが基準値より高値を示していることから、処方薬による糖尿病の改善はされていないことが予測できる。また、BUN、Scr、尿タンパクが基準値より高値を示しており、血清アルブミンが基準値より低値を示していることから、糖尿病性腎症を合併していると考えられ、これにより浮腫が起こっていると予測できる。また、ヘモグロビン(Hb)は基準値を下回るため、貧血の可能性もある。設問の検査データ(正常値及び患者の値)を以下に示す。
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1 入っていない
HbA1cの基準(正常)値は4.6〜6.2%である。患者の検査データによるとHbA1cの値が7.1%であるため、正常値の範囲に入っていない。

2 入っていない
血圧の基準(正常)値は140/90 mmHg以下である。患者の検査データによると血圧の値が152/93 mmHgであるため、正常値の範囲に入っていない。

3 入っている
低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)の基準(正常)値は140 mg/dL未満である。患者の検査データによるとLDL−Cの値が99 mg/dLであるため、正常値の範囲に入っている。

4 入っている
血清カリウム(K)の基準(正常)値は3.5〜4.9 mEq/L未満である。患者の検査データによると血清カリウム(K)が4.9 mEq/Lであるため、正常値の範囲に入っている。

5 入っている
トリグリセリド(TG)血症の基準(正常)値は70〜150 mg/dLである。患者の検査データによるとTGの値が120 mg/dLであるため、正常値の範囲に入っている。


問306 解答 3

1 不適切
処方されているグリメピリド(スルホニル尿素系経口血糖降下薬)は重篤な腎障害患者に禁忌であり、メトホルミン(ビグアニド系経口血糖降下薬)は中等度以上の腎障害患者への投与は禁忌である。また、本患者は、腎障害を起こしている。これらのことから、この患者にグリメピリド及びメトホルミンの増量を行なうことは不適切である。

2 不適切
本患者の血清カリウム値は基準(正常)値の範囲内ではあるが、比較的高値であり、腎障害を起こしていることから血清カリウム値が上昇する可能性がある。そのため、この患者にカリウム製剤の追加を行なうことは不適切である。

3 適切
本患者のBUNや血清クレアチニン値が高値であることや症状等により、糖尿病性腎症に伴う浮腫が起こっていることが予想できる。フロセミドは重篤な腎障害のある患者、糖尿病のある患者には慎重投与ではあるが、フロセミドを投与することにより浮腫の改善を行なうことができる。そのため、この患者にフロセミドの追加を行なうことは適切である。

4 不適切
本患者のLDL−C、HDL−C、TGは、いずれも基準(正常)値の範囲内であり、脂質異常症は認められない。そのため、この患者に脂質異常症治療薬であるコレスチラミンの追加を行なうことは不適切である。

5 不適切
本患者のLDL−C、HDL−C、TGは、いずれも基準(正常)値の範囲内であり、脂質異常症は認められない。そのため、脂質異常症治療薬であるベサフィブラートの追加を行なうことは不適切である。


問307 解答 3

BUN及び血清クレアチニンの高値及び症状等により、患者が腎障害を起こしていることが分かる。このことから、腎臓で産生されるエリスロポエチンの産生が低下し、腎性貧血が起こったと考えられる。
なお、腎性貧血の一般的な薬物治療は、エリスロポエチンを補うためにエポエチンアルファなどを投与するとともに、鉄剤を併用する。

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