令和05年度 第108回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 210,211

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問 210  正答率 : 70.8%
問 211  正答率 : 54.0%

 国家試験問題

国家試験問題
60歳女性。5年前より糖尿病治療のためクリニックを受診している。今回体重増加と血糖コントロール不良により、現在服用中の薬剤(処方1)にダパグリフロジンプロピレングリコール水和物錠(処方2)が追加された。

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問210(実務)
薬剤師による処方2の説明として、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 尿量を減らす働きがあります。


2 尿中の糖を減らす働きがあります。


3 排尿時の違和感があるときは申し出てください。


4 喉の渇きを感じることがあります。


5 腹部膨満感を起こしやすいです。




問211(物理・化学・生物)
処方2のダパグリフロジン(A)は、リンゴの樹皮に含まれるフロリジン(B)をリード化合物として開発された。これらの化合物に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。

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1 いずれもガラクトピラノシド構造を含む。


2 化合物Bは、化合物Aよりグリコシダーゼに対して安定である。


3 化合物Bは、α−グリコシド結合をもつ。


4 化合物Aは、プロドラッグである。


5 化合物Bは、アセタール結合をもつ。

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問 210    
問 211    

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問210 解答 3、4

1 誤
ダパグリフロジンは、SGLT−2阻害薬であり、近位尿細管でのグルコースの再吸収を抑制し、尿中へのグルコース排泄を促進することにより血糖を低下させる。このとき、浸透圧性利尿作用を示すため、尿量は増加する

2 誤
ダパグリフロジンは、近位尿細管でのグルコースの再吸収を抑制するため、尿中のグルコースは増加する。

3 正
ダパグリフロジンは、副作用として尿路感染症を起こすことがあるため、排尿時の痛みがあるなどの違和感がある場合は、薬剤師に相談するように説明する。

4 正
ダパグリフロジンの利尿作用により、脱水症状(口渇、多尿、頻尿など)を生じることがある。

5 誤
ダパグリフロジンは、腹部膨満感を起こしにくい。腹部膨満感を起こしやすい糖尿病治療薬には、α−グルコシダーゼ阻害薬のアカルボースやボグリボースなどがある。


問211 解答 5

リンゴやナシなどの樹皮から得られるフロリジン(天然配糖体)を非経口投与すると、腎臓に存在するSGLTを阻害し、尿中に糖を排泄することが知られていた。フロリジンの作用は、「尿中に糖が出る」という病気の症状を思わせるものであったが、「尿中に糖を出す」という「糖尿病を治療する」視点に変わり、フロリジンをリード化合物としてSGLT−2阻害剤がアナログ医薬品として開発された。
また、フロリジンの経口投与では、腸管のβ−グルコシダーゼにより加水分解されるという課題があった。そこで、ダパグリフロジンでは、β−グルコシダーゼに対しての安定性を高める構造設計がされている。

1 誤
ダパグリフロジン(A)とフロリジン(B)は、いずれもグルコピラノシド構造を有する。ピラノシドとは、6員環糖構造のピラノースのアノマー性OH基が、グリコシド結合した化合物の総称である。このとき、糖の種類がグルコースであればグルコピラノシドとなり、ガラクトースであればガラクトピラノシドとなる。

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2 誤
ダパグリフロジン(A)はフロリジン(B)のβ−グルコシダーゼに対する安定性を高めた構造をもつ(前記参照)。β−グルコシダーゼは、フロリジン(B)のO−グリコシド結合を加水分解することができるが、ダパグリフロジン(A)は、O−グリコシド結合をもたないため、β−グルコシダーゼに対して安定である。

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3 誤
フロリジン(B)は、β−グリコシド結合をもつ。環状構造の糖は、CH2OH基とアノマー性OH基(もしくはアノマー性OH基が置換したもの)が同じ向き(シス)にある場合をβ結合、反対向き(トランス)にある場合をα結合という。以下に、フロリジン(B)のβ−グリコシド結合を示す。

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4 誤
プロドラッグは、薬物のもつ欠点を改善するためにその化学構造を修飾し、化学的、物理的性質を変えた薬物の前駆体のことであり、それ自身は薬効を示さない。ダパグリフロジン(A)は、それ自身が薬効を示すため、プロドラッグではない。

5 正
アセタールとは、1つのC原子に2つのアルコキシ基(−OR基)が結合した構造の総称である。したがって、フロリジン(B)はアセタール構造をもつ。

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