令和02年度 第105回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 262,263

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問 262  正答率 : 70.5%
問 263  正答率 : 63.3%

 国家試験問題

国家試験問題
53歳男性。2型糖尿病、高血圧症及び高コレステロール血症(非家族性)のため、生活習慣の改善に加え以下の処方による治療を行っている。しかし、LDL−Cの改善が認められたものの、そのコントロールが不十分なので処方の追加について医師から薬剤師に相談があった。

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家族歴:父親が50歳で心筋梗塞
検査値:血圧131/79 mmHg、血清クレアチニン値1.1 mg/dL、HbA1c 6.7%(NGSP値)、LDL−C 179 mg/dL、HDL−C 42 mg/dL、TG(トリグリセリド)120 mg/dL、CK(クレアチンキナーゼ)57 U/L、AST 53 IU/L、ALT 41 IU/L、

問262(実務)
医師へ提案する薬物として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 エゼチミブ


2 イコサペント酸エチル


3 エボロクマブ


4 シンバスタチン


5 ベザフィブラート




問263(薬理)
提案した薬物それぞれの作用機序として正しいのはどれか。2つ選べ。

1 転写因子 sterol−responsive element binding protein(SREBP)−2の活性化を介して、LDL(低密度リポタンパク質)受容体の合成を促進する。


2 コレステロールトランスポーター(NPC1L1)を阻害することで小腸における食物由来のコレステロール吸収を抑制する。


3 SREBP−1cを抑制し、肝臓でのTG合成を抑制する。


4 リソソームにおけるLDL受容体の分解を抑制し、LDL受容体の細胞膜へのリサイクリングを増加させる。


5 ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPARα)を刺激することでTGの加水分解を促進させる。

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問 262    
問 263    

 e-REC解説

問262 解答 1、3

本患者は、高コレステロール血症(非家族性)の治療を行なっているが、LDL−Cの改善が不十分であるため、LDL−Cを低下させる薬物を医師に提案するべきである。選択肢の薬物のうち、これに該当する薬物は、エゼチミブ、エボロクマブ、シンバスタチンであるが、本患者はHMG−CoA還元酵素阻害薬であるロスバスタチンをすでに服用しているため同種薬のシンバスタチンは除外される。なお、イコサペント酸エチルとベザフィブラートは、主にTG(トリグリセリド)値を低下させる薬物であり、本患者のTG値は正常範囲内(150 mg/dL以下)であるため、医師へ提案する薬剤としては適切ではない。
よって、医師へ提案する薬物として適切なのは、エゼチミブ、エボロクマブである。


問263 解答 2、4

1 誤
シンバスタチンの作用機序である。シンバスタチンは、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoA(HMG−CoA)からメバロン酸への変換酵素であるHMG−CoA還元酵素を阻害してコレステロールの産生を抑制し、肝細胞中のコレステロール量を低下させる。これにより、肝細胞表面の低密度リポタンパク質(LDL)受容体の発現調節に関与する転写因子 sterol−responsive element binding protein(SREBP)−2が活性化され、LDL受容体の合成を促進する。その結果、血中LDL−Cが肝臓に取り込まれることで、血中LDL−C量が低下する。

2 正
エゼチミブの作用機序である。エゼチミブは、小腸粘膜上のコレステロールトランスポーター(NPC1L1)を選択的に阻害することにより、小腸における食物由来のコレステロール吸収を抑制する。

3 誤
イコサペント酸エチルの作用機序である。イコサペント酸エチルは、脂質合成系の諸酵素の活性を調節している転写因子SREBP−1cの活性化とSREBP−1c自身の遺伝子転写を抑制することで、肝臓でのTG合成を抑制するなど、様々な作用により血清脂質を低下させる。

4 正
エボロクマブの作用機序である。 エボロクマブは、LDL受容体の分解に関わるPCSK9に結合しその働きを阻害することで、リソソームにおけるLDL受容体の分解を抑制し、LDL受容体の細胞膜へのリサイクリングを増加させ、血中LDL−C量を低下させる。

5 誤
ベザフィブラートの作用機序である。 ベザフィブラートは、脂肪細胞のペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)を刺激することにより、リポタンパクリパーゼ(LPL)を活性化し、TGの加水分解を促進することで、血中TG量を低下させる。そのほか、コレステロール生合成抑制作用、LDL受容体活性化作用などを有し、血中LDL−C量を低下させる。

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