令和02年度 第105回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 103

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問 103  正答率 : 50.1%

 国家試験問題

国家試験問題
臭化アルキル(R−Br)に求核剤(Y)を作用させる置換反応について、反応の進行に伴う自由エネルギー変化を図示するとA又はBのようになる。以下の記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。

スクリーンショット 2020-06-15 17.13.17.png

1 Aの反応は吸エルゴン反応である。


2 Bの反応は二分子反応である。


3 Aの反応において、臭化アルキルの置換基Rの影響によりaの状態が混み合ってくると、エネルギーⅠが大きくなる。


4 Bの反応においては、bからcに至る段階が律速となる。


5 Aの反応において、R−Brとして2−ブロモブタンの一方のエナンチオマーのみを用いたとき、生成物はラセミ混合物となる。

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問 103    

 e-REC解説

解答 3

臭化アルキル(R−Br)に求核剤(Y)を作用させる代表的な置換反応はSN1反応とSN2反応である。反応の進行に伴う自由エネルギー変化は、Aの反応は遷移状態(山の頂点)が1つの一段階反応であることからSN2反応であり、Bの反応は遷移状態(山の頂点)が2つの二段階反応であることからSN1反応であると判断できる。

1 誤
吸エルゴン反応とは、自由エネルギーの変化が正(自由エネルギーが増加する)の反応であるが、Aの反応はグラフより自由エネルギーの変化が負(自由エネルギーが減少する)の反応であるため、発エルゴン反応である。

2 誤
Bの反応はSN1反応であり、一分子反応である(前記参照)。

3 正
Aの反応はSN2反応であり、臭化アルキルの置換基Rが小さいほど反応は進行しやすい。逆に置換基Rの立体障害が大きくなりaの状態が混み合ってくると、反応が進行しにくくなる。これは活性化エネルギーⅠが大きくなることに由来している。

4 誤
Bの反応はSN1反応であり、1段階目のBrが脱離してカルボカチオン中間体を生成する段階が律速となる。したがって、反応開始からbに至る過程が律速となる。

5 誤
Aの反応はSN2反応であるため反応時にwalden反転(立体反転)を起こす。したがって、R−Brとして2−ブロモブタンの一方のエナンチオマーのみを用いたとき、生成物は立体が反転した一方のエナンチオマーのみが生成する。なお、Bの反応(SN1反応)の場合、R−Brとして2−ブロモブタンの一方のエナンチオマーのみを用いたとき、生成物はラセミ混合物となる。

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