令和07年度 第110回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 108

Pin Off  未ブックマーク   
問 108  正答率 : 53.0%

 国家試験問題

国家試験問題
図は、アラニン誘導体Aの1H NMRスペクトル〔400 MHz、CDCl3、基準物質はテトラメチルシラン(TMS)〕を示している。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
なお、×印のシグナルはCDCl3中に含まれるCHCl3のプロトンに由来するシグナルであり、fのピークは重水(D2O)を添加するとほぼ消失した。

スクリーンショット 2025-05-29 9.21.41.png

スクリーンショット 2025-05-29 9.22.53.png


1 ピークa、b、cのプロトン数の合計は6である。


2 ピークeに対応するプロトンはエであり、重水を加えると四重線(カルテット)となる。


3 ピークgに対応するプロトンはカとキである。


4 アのプロトンとカップリング(スピン-スピン結合)しているのは、ピークdに対応するプロトンである。


5 イのプロトンのピークは、コのプロトンのシグナルより高磁場側にある。

 解説動画作成を要望!

 解答を選択

問 108    

 e-REC解説

解答 2、4

1H−NMRスペクトルにおいて、異なる環境にあるプロトン(1H)は、それぞれ個別の化学シフト値(ppm)をもつピークを与える。一般にアルキル基のプロトン(-C-CH)は約1〜3 ppm付近に、メトキシ基のように酸素原子が隣接したプロトン(-O-CH)は約4 ppm付近に、芳香族に直接結合したプロトンは約6〜8 ppm付近にピークが出現する。また、隣接するプロトン同士(HC-CH)はカップリングしており、互いのピークを分裂させる。これらをふまえて、アラニン誘導体Aの各プロトンの特徴を以下にまとめる。

スクリーンショット 2025-05-29 9.25.04.png


1 誤
ピークaに対応するプロトンはア(3H)、ピークbに対応するプロトンはウ(3H)、ピークcに対応するプロトンはコ(3H)であるため、ピークa、b、cのプロトン数の合計は9である。

2 正
ピークeに対応するプロトンはエであり、重水を加えると隣接窒素上のプロトンが重水素(D)に置換される。重水素はプロトンとカップリングしないため、エのプロトンのカップリング相手がウの3つのプロトンのみとなり、四重線(カルテット)になる。

3 誤
カのプロトンとキのプロトンは、異なる環境にあるため、同一のピークとして出現しない。なお、ピークgに対応するプロトンは、キとケである。

4 正
アのプロトンとカップリング(スピン-スピン結合)しているのは、ピークdに対応するイのプロトンである。

5 誤
NMRスペクトルでは左側(化学シフト値が大きい側)を低磁場側、右側(化学シフト値の小さい側)を高磁場側と呼ぶため、イのプロトンのピーク(ピークd:約4.2 ppm)は、コのプロトンのシグナル(ピークc:約3.9 ppm)より低磁場側にある。

 Myメモ - 0 / 1,000

e-REC 過去問解説システム上の [ 解説 ] , [ 解説動画 ] に掲載されている画像・映像・文章など、無断で複製・利用・転載する事は一切禁止いたします