平成31年度 第104回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 112

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問 112  正答率 : 50.9%

 国家試験問題

国家試験問題
マウスの肝臓から酵素Xの精製を試みた。以下に実験手順の概要(①〜④)を示す。

① ゲル濾過クロマトグラフィーにより肝臓抽出液Aを分画した。
② 各画分の酵素Xの活性を測定し、その活性が高い画分を集めたものをBとした。
③ Bを陰イオン交換クロマトグラフィーにより分画した。
④ 各画分の酵素Xの活性を測定し、その活性が高い画分を集めたものをCとした。

上記A、B及びCの液量、タンパク質濃度、全タンパク質量と酵素活性(全活性及び比活性)を以下の表に示した。比活性とは、試料中のタンパク質の単位重量当たりの酵素活性のことである。なお、酵素活性における1 U(ユニット)は、1分間当たり、1 µmolの生成物を生成する酵素の量を表す。

表 実験結果のまとめ
スクリーンショット 2019-06-14 10.14.02.png


実験方法及び結果に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 A中の酵素Xの20%がBに回収されたと考えられる。


2 ゲル濾過クロマトグラフィーでは、分子量の小さなタンパク質ほど、早くカラムから溶出される。


3 陰イオン交換クロマトグラフィーでは、正の電荷をもった樹脂に酵素Xが保持されたと考えられる。


4 Bの比活性アはAの比活性よりも高い。


5 Cの比活性イは140 U/mgである。

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問 112    

 e-REC解説

解答 3、4

1 誤
「酵素活性における1 U(ユニット)は、1分間当たり、1 µmolの生成物を生成する酵素の量を表す」と文中にあることから、実験結果のAとBの全活性(U)より回収された酵素Xの割合を推測することができる。Aの全活性10,000 U、Bの全活性8,000 Uより、A中の酵素Xの80%(8,000 U/10,000 U=0.8)がBに回収されたと考えられる。

2 誤
ゲル濾過クロマトグラフィーとは、分子ふるい効果を持つ固定相をカラムに充てんし、分子量、分子の形の異なる物質を分離・分析する方法である。分子ふるい効果により、小さな分子はゲルの網目に捕らえるが大きな丸い分子はゲルの網目に捕らえられず外側を通り抜ける。したがって、ゲル濾過クロマトグラフィーでは、分子量の小さなタンパク質ほど遅くカラムから溶出される。

3 正
イオン交換クロマトグラフィーは、イオン交換基を含む樹脂、セルロース、セファデックスを固定相として電気的な吸着力の差を利用し、分離・精製する方法である。陽イオン交換クロマトグラフィーでは、負の電荷をもった樹脂を用い、陰イオン交換クロマトグラフィーでは正の電荷をもった樹脂を用いる。本実験では、Bを陰イオン交換クロマトグラフィーにより分画し、各画分の酵素Xの活性が高い画分を集めたCの全活性が7,000 Uとなっているため、正の電荷を持った樹脂に酵素Xが保持されたと考えられる。

4 正
「比活性とは、試料中のタンパク質の単位重量当たりの酵素活性のことである。」と文中にあることから、比活性(U/mg)は実験結果の全タンパク質量(mg)と全活性(U)より以下のように計算される。
スクリーンショット 2019-06-14 10.15.27.png
よって、Bの比活性アはAの比活性(50 U/mg)よりも高い。

5 誤
Cの比活性イは以下のように計算される。
スクリーンショット 2019-06-14 10.16.18.png
よって、Cの比活性イは1,400 U/mgである。

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