令和06年度 第109回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 116

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問 116  正答率 : 54.2%

 国家試験問題

国家試験問題
プリオン病では、プリオンタンパク質(PrP)の感染性を有した異常型が蓄積する。プリオンタンパク質の特徴として、正常型であるPrPcと異常型であるPrPScが相互作用(会合)すると、正常型が異常型へと変換されることが知られている。図1はNMRにより解析されたPrPcの立体構造、図2はPrPScの仮想の立体構造をそれぞれ安定な二次構造をわかりやすくリボン図で描いている。なお、図中には示されていないが、PrPcのC末端にはGPIアンカーが付加されている。
図3は、PrPの遺伝子配列から予想される翻訳産物をアミノ酸の一文字表記で示している。アミノ酸配列のうち、プロリン残基は黒点(●)で、グリシン残基は2重下線で示している。
以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

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1 図2に示すPrPScは、図1に示すPrPcに比べてβシート構造が多い。


2 βシート構造の安定性は、並行するペプチド鎖間で形成されるジスルフィド(S−S)結合によっている。


3 図3に示すPrPに点在するプロリンは、その環状構造により二次構造の形成とその規則性に影響を与えている。


4 図3に示すPrPに多く存在するグリシンは、特定の二次構造からループ構造への変化を妨げる要因となっている。


5 PrPcにおいてGPIアンカーが結合するアミノ酸残基は、図3で1番目のメチオニンである。

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問 116    

 e-REC解説

解答 1、3

1 正
図1と図2のリボン図において、βシート構造は複数の並行な矢印で表されている。図1には2個の、図2には10個の矢印が含まれるため、図2に示すPrPScは、図1に示すPrPcに比べてβシート構造が多い。

2 誤
βシート構造の安定性は、並行するペプチド鎖間で形成される水素結合による。なお、ジスルフィド(S−S)結合は主に三次構造の安定化に寄与している。

3 正
プロリン残基は側鎖とアミノ基が環状構造を形成しているため、他のアミノ酸残基と比べて結合の回転に対する制約が極端に大きく、二次構造中に含まれにくくループ構造に含まれやすい。したがって、プロリンはその環状構造により二次構造の形成とその規則性に影響を与えているといえる。

4 誤
グリシン残基は側鎖(H)の立体障害が最も少ないため、他のアミノ酸残基と比べて結合の回転に対する制約が極端に小さく、二次構造中に含まれにくくループ構造に含まれやすい。したがって、グリシンは特定の二次構造からループ構造への変化を起こしやすくしているといえる。

5 誤
タンパク質のアミノ酸残基はN末端から数えてn番目と表記されるため、図3よりPrPcのN末端のアミノ酸残基は1番目のメチオニン(一文字表記M)、C末端のアミノ酸残基は253番目のグリシン(一文字表記G)である。リード文より「PrPcのC末端にはGPIアンカーが付加されている」ことがわかるため、PrPcにおいてGPIアンカーが結合するアミノ酸残基は、図3で253番目のグリシンである。

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