平成29年度 第102回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 117

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問 117  正答率 : 39.2%

 国家試験問題

国家試験問題
マウスのある細胞において、タンパク質(ア)及び(イ)の産生は転写因子Xにより調節されている。両タンパク質の産生に対するその転写因子の機能を明らかにするため、以下のsiRNA(低分子干渉RNA)導入実験を行った。実験方法、原理と考察に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。

【実験】 転写因子Xに対するsiRNAを導入しない細胞A及び導入した細胞Bを24時間培養した。その後、細胞を破壊し、全タンパク質を回収して、それぞれ試料A及びBとした。同一タンパク質量の試料A及びBを用いてSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、分離されたゲル中のタンパク質をニトロセルロース膜に転写した。次に、そのニトロセルロース膜においてタンパク質(ア)及び(イ)に対する特異的抗体を用いた抗原抗体反応を行った。その結果、図のようにそれぞれのタンパク質に特異的なバンド(黒色)を検出した。なお、実験に用いたsiRNAは特異的に転写因子XのmRNAをノックダウンすること、そのノックダウン効果は培養24時間の時点で最大となること、さらにタンパク質(ア)及び(イ)のニトロセルロース膜への転写効率に差がないことを確認している。
スクリーンショット 2017-10-19 14.45.42.png

1 転写因子Xの遺伝子が存在する染色体が、導入されたsiRNAにより破壊される。


2 図は、サザンブロット法を用いて得られた結果である。


3 転写因子Xは、タンパク質(ア)をコードする遺伝子の転写を抑制的に調節していると考察される。


4 タンパク質(イ)の産生は、転写因子Xにより抑制的に調節されると考察される。


5 転写因子XのsiRNAによるノックダウン効果は、細胞Bをさらに培養することにより減弱すると予想される。

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問 117    

 e-REC解説

解答 3、5

siRNA(低分子干渉RNA)とは、両鎖の3’末端が2塩基突出した20〜25塩基対の二本鎖RNAであり、相補的な塩基配列を有するRNAの切断を誘導する。
siRNAなどにより特定の遺伝子発現を抑制することをノックダウンといい、siRNAなどにより特定の遺伝子発現が抑制される現象をRNA干渉(RNAi)という。
本問の実験では、マウスのタンパク質(ア)及び(イ)の産生に対する転写因子Xの機能を明らかにするために、転写因子Xに対するsiRNAを細胞Aには導入せず、細胞Bには導入している。実験結果より、タンパク質(ア)及び(イ)に対する転写因子Xの機能についての考察を次にまとめる。
スクリーンショット 2017-10-19 14.47.49.png

1 誤
本問の実験において用いたsiRNAは特異的に転写因子XのmRNAをノックダウンすることが記されている。したがって、本実験において、siRNAを導入することにより転写因子XのmRNAは分解されるが、転写因子Xの遺伝子が存在する染色体が破壊されることはない。

2 誤
本問では、抗原抗体反応を用いてタンパク質を検出していることから、ウエスタンブロット法を用いて得られた結果である。なお、サザンブロット法は、標識プローブを用いて特定の遺伝子(DNA)を検出する方法である。

3 正
問題の図より、タンパク質(ア)の生成量は、試料Aは試料Bよりタンパク質(ア)の産生量が少ないことがわかる。このことから、転写因子Xはタンパク質(ア)をコードする遺伝子の発現を抑制的に調節し、タンパク質(ア)の産生を抑制すると考えられる(前記参照)。

4 誤
問題の図より、タンパク質(イ)の生成量は、試料Aは試料Bよりタンパク質(イ)の産生量が多いことがわかる。このことから、転写因子Xはタンパク質(イ)をコードする遺伝子の発現を促進的に調節し、タンパク質(イ)の産生を促進すると考えられる(前記参照)。

5 正
問題文より、siRNAのノックダウン効果は培養24時間の時点で最大となることから、細胞Bを24時間以降さらに培養することでノックダウン効果は減弱すると考えられる。

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