令和06年度 第109回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 120,121,122

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問 120  正答率 : 75.2%
問 121  正答率 : 85.8%
問 122  正答率 : 72.6%

 国家試験問題

国家試験問題
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染と薬害エイズに関する以下の問いに答えよ。

問120(物理・化学・生物)
血友病の治療のために投与された非加熱血液製剤によりHIV感染が生じた事例に関連する生物学的知識として、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 遺伝性血友病はX連鎖潜性(劣性)遺伝により生じるため、男性に発症しやすい。


2 血漿中のHIVは加熱処理しなくても、孔径0.22 µmのメンブレンろ過により除去できる。


3 血液製剤に混入したHIVは、治療を受ける患者のCD8陽性Tリンパ球に感染する。


4 HIVはレトロウイルスであり、プロウイルス化により感染宿主細胞内で長期間潜伏できる。


5 HIV感染による症状として、花びらのように分かれた核を持つ特徴的な腫瘍化T細胞がみられるようになる。




問121(衛生)
図1は、国内のHIV感染者及びAIDS患者の年間新規報告数の推移を示したものであり、図2は、2021年における国内のHIV感染者の新規報告の感染経路別内訳である。HIV感染者の発生動向に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

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1 図1のAはHIV感染者で、BはAIDS患者を表している。


2 2021年におけるHIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数に占めるAIDS患者の割合は、約80%と高い水準である。


3 HIV感染者年間新規報告数は、男性よりも女性の方が多い。


4 図2の経路アは、母子感染によるものである。


5 図2の経路イは、同性間の性的接触によるものである。




問122(法規・制度・倫理)
血液製剤による感染被害の救済制度に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 適正な使用目的に従い適正に使用された場合の感染被害の救済を目的としている。


2 給付金は、原因となった血液製剤の製造販売業者が全額負担する。


3 医療費給付の対象は、入院を要する程度以上の感染被害である。


4 葬祭料や遺族年金に関する給付項目は含まれていない。


5 製造販売業者の過失が裁判によって証明された場合に救済の対象となる。

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問 120    
問 121    
問 122    

 e-REC解説

問120 解答 1、4

1 正
遺伝性血友病はX連鎖潜性(劣性)遺伝により生じるため、XY染色体をもつ男性の方がXX染色体をもつ女性に比べ発症しやすい。

2 誤
HIVなどのウイルスの大きさは約0.1 µmであるため、孔径0.22 µmのメンブレンろ過による除去は難しい。なお、HIVは易熱性であるため加熱処理が有効である。

3 誤
HIVはレトロウイルスであり、CD4陽性Tリンパ球に感染したのち、逆転写酵素により合成したDNAを宿主細胞のDNAに組み込むことでプロウイルス化し、感染宿主細胞内で長期間潜伏・増殖する。

4 正
解説4参照

5 誤
花びらのように分かれた核を持つ特徴的な腫瘍化T細胞(flower cell)がみられる疾患は、ヒト白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染による成人T細胞白血病である


問121 解答 1、5

1 正

2 誤
図1より、2021年におけるHIV感染者約750人、AIDS患者は約300人であるため、この二つ合わせた新規報告数に占めるAIDS患者の割合は、約30%である。

3 誤
新規HIV感染者の大半は男性であり、特に同性間での性的接触による感染が最も多い。

4 誤
図2の経路アは、異性間の性的接触によるものである。

5 正
解説3参照


問122 解答 1、3

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下、「PMDA」という。)による健康被害救済制度は、許可医薬品等の副作用に対する救済を行う医薬品副作用被害救済制度と許可生物由来製品等による感染等に対する救済を行う生物由来製品感染等被害救済制度に大別される。

1 正
血液製剤は許可生物由来製品の一種であり、適正な使用目的に従い適正に使用された場合の感染はPMDAによる生物由来製品感染等被害救済制度の対象である。

2 誤
血液製剤は許可生物由来製品の一種であり、生物由来製品感染等被害救済制度の対象である。生物由来製品感染等被害救済制度の給付金は、PMDAから給付されるが、その財源には許可生物由来製品及び許可再生医療等製品の製造販売業者からの拠出金(感染拠出金)が充てられる。
感染拠出金には、すべての許可生物由来製品等の製造販売業者が拠出する一般拠出金と、感染被害の原因となった製品の製造販売業者が拠出する原因拠出金(付加拠出金)がある。
したがって、血液製剤による感染被害の給付金は、原因となった血液製剤の製造販売業者が全額負担するのではなく、すべての製造販売業者からの拠出金と原因となった血液製剤の製造販売業者からの原因拠出金で負担する。

3 正
生物由来製品感染等被害救済制度の医療費の給付対象は、入院を要する程度以上の感染被害である。

4 誤
本制度の給付項目には、医療費、医療手当、障害年金、障害児養育年金、遺族年金、遺族一時金、葬祭料がある。

5 誤
製造販売業者の過失が裁判によって証明された場合には、その製造販売業者が健康被害に関する賠償を行う。そのため、PMDAが行う生物由来製品感染等被害救済制度の対象からは除かれる。

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