令和03年度 第106回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 166,167

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問 166  正答率 : 65.1%
問 167  正答率 : 75.9%

 国家試験問題

国家試験問題
問166〜167
35歳男性。身長173 cm、体重85 kg。父親が糖尿病。既往歴なし。喫煙歴なし。機会飲酒。会社事務職で日頃より運動不足であり、毎日1 L以上の甘い清涼飲料水を飲用していた。この1年間で体重が3 kg増加したが、ここ数ヶ月は体重の減少を自覚している。7日前より全身倦怠感、口渇及び多尿を認めたため外来受診した。受診時の意識は清明であり、血糖値480 mg/dL、HbA1c 11.0%(NGSP値)、尿糖(4+)、尿蛋白(-)、尿中ケトン体(3+)であった。

問166(薬理)
血糖降下作用を有する薬物の作用機序に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 メトホルミンは、ジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP−4)を阻害することで、血中インクレチン濃度を上昇させる。


2 カナグリフロジンは、ナトリウム−グルコース共輸送体2(SGLT2)を阻害することで、腎尿細管におけるグルコースの再吸収を抑制する。


3 アログリプチンは、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化することで肝臓の糖新生を抑制する。


4 インスリン デグルデクは、骨格筋や脂肪組織におけるグルコースの細胞内取り込みを促進する。


5 リキシセナチドは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)受容体を刺激することで、インスリン及びグルカゴン分泌を促進する。




問167(病態・薬物治療)
この患者で、血中濃度が顕著に上昇していると考えられるのはどれか。2つ選べ。

1 3−ヒドロキシ酪酸


2 アセト酢酸


3 γ−アミノ酪酸


4 水酸化物イオン


5 ナトリウムイオン

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問 166    
問 167    

 e-REC解説

問166 解答 2、4

1 誤
メトホルミンは、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化することで、末梢での糖利用を促進し、肝臓での糖新生を抑制することで血糖値を低下させる。

2 正
カナグリフロジンは、ナトリウム−グルコース共輸送体2(SGLT2)を阻害することで、腎尿細管におけるグルコースの再吸収を抑制し、血液中の過剰なグルコースの尿中排泄を促進する。

3 誤
アログリプチンは、ジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP−4)を阻害することで、血中インクレチン濃度を上昇させ、血糖依存的にインスリンの分泌を促進しグルカゴンの分泌を抑制する。

4 正
インスリン デグルデクは、骨格筋や脂肪組織におけるグルコースの細胞内取り込みを促進し、肝臓における糖新生を抑制する。

5 誤
リキシセナチドは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)受容体を刺激することで、血糖依存的にインスリンの分泌を促進しグルカゴンの分泌を抑制する。


問167 解答 1、2

糖尿病とは、インスリン作用不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝性疾患である。インスリン作用不足により筋組織などに糖が取り込めず、糖利用が行えないため、代償的に脂肪分解を亢進させてエネルギーを産生しようとする。その際にケトン体(アセトン、アセト酢酸、3(β)−ヒドロキシ酪酸)が産生されアシドーシスを引き起こすことがあり、これを糖尿病ケトアシドーシスという。また、糖尿病ケトアシドーシス時には、重度の高血糖を引き起こし、脱水状態もきたす。
受診時の検査所見として、血糖値480 mg/dL、尿中ケトン体(3+)とあることから、本患者はケトアシドーシスである可能性が高い。よって、選択肢のうち血中濃度が顕著に上昇していると考えられるのは、アセト酢酸や3−ヒドロキシ酪酸などのケトン体である。

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