令和07年度 第110回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 173

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問 173  正答率 : 61.8%

 国家試験問題

国家試験問題
腎機能が低下したある患者のイヌリンクリアランスが30 mL/min/1.73 m2、クレアチニンクリアランスが50 mL/min/1.73 m2であった。この患者の腎機能に関する記述として適切なのはどれか。2つ選べ。
ただし、クレアチニンは血漿タンパク質に結合せず、尿細管で再吸収されないものとする。

1 糸球体ろ過速度は20 mL/min/1.73 m2と推定できる。


2 イヌリンの尿細管での再吸収クリアランスは20 mL/min/1.73 m2と推定できる。


3 クレアチニンの尿細管分泌クリアランスは20 mL/min/1.73 m2と推定できる。


4 糸球体ろ過速度が正常なときより、イヌリンクリアランスは大きいと考えられる。


5 糸球体ろ過速度が正常なときより、クレアチニンクリアランスは小さいと考えられる。

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問 173    

 e-REC解説

解答 3、5

薬物の尿中排泄は、糸球体におけるろ過、尿細管における分泌、再吸収という三つの過程によって行われる。血液中に含まれる薬物のうちタンパクと結合していない非結合形の薬物が糸球体でろ過を受ける。次に、近位尿細管においてトランスポーター等によって認識される薬物は分泌を受け、尿細管に流入する。その後、尿細管内に流入した薬物のうち再吸収を受けなかった薬物が尿中に排泄される。
このうち、糸球体ろ過における単位時間あたりの血漿のろ過量を糸球体ろ過速度(GFR)といい、通常成人では約100 mL/min/1.73 m2である。血漿中の薬物のうち、糸球体でろ過を受けるのは非結合形の薬物のみなので、ろ過クリアランスは、GFR×fp(fp:血漿タンパク非結合率)で表される。

スクリーンショット 2025-06-03 12.39.36.png


イヌリンは、血漿タンパクと結合せず(fp=1)、尿細管分泌や再吸収を受けない。したがって、イヌリンのクリアランスは、ろ過クリアランスと一致し、GFRと等しくなる。
一方、生体内で合成される内因性物質であるクレアチニンはイヌリンと同様に血漿タンパクと結合せず、主に糸球体においてろ過され再吸収をほとんど受けないが、尿細管において若干の分泌を受ける。そのため、クレアチニンのクリアランスはイヌリンのクリアランスよりも大きくなる。

1 誤
GFRは、イヌリンクリアランスと等しくなる。よって、本問の患者におけるGFRは30 mL/min/1.73 m2と推定できる。

2 誤
イヌリンは尿細管で分泌や再吸収を受けない。そのため、再吸収に関わるクリアランスは存在しない。

3 正
イヌリンとクレアチニンの腎排泄の差は、尿細管分泌の有無であるため、クレアチニンの尿細管分泌クリアランスは、クレアチニンクリアランスとイヌリンクリアランスの差で表される。

スクリーンショット 2025-06-03 12.41.33.png

4 誤
糸球体ろ過速度の正常値は通常成人で約100 mL/min/1.73 m2である。本問の患者のイヌリンクリアランスは30 mL/min/1.73 m2であるため、糸球体ろ過速度が正常なときよりも、本患者のイヌリンクリアランスは小さいと考えられる。

5 正
本問の患者のクレアチニンクリアランスは50 mL/min/1.73 m2であるため、糸球体ろ過速度が正常なときよりも、本患者のクレアチニンクリアランスは小さいと考えられる。

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