令和06年度 第109回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 175

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問 175  正答率 : 40.8%

 国家試験問題

国家試験問題
下表には薬物の肝抽出率及び血漿タンパク結合率を示す。これら3種の薬物の体内動態の変動に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

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1 ニカルジピンの肝クリアランスは、肝血流量による影響を受けない。


2 ニカルジピンの定常状態における非結合形薬物濃度は、肝血流量が一定であれば、血漿タンパク結合率の変動による影響を受けない。


3 フェニトインとテオフィリンの肝クリアランスは、いずれも肝固有クリアランスの変動の影響を受けやすい。


4 血漿タンパク質の減少による肝クリアランスへの影響は、フェニトインよりテオフィリンの方が大きい。


5 フェニトインとテオフィリンの定常状態における非結合形薬物濃度は、肝固有クリアランスが一定であれば、血漿タンパク結合率の変動による影響を受けない。

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問 175    

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解答 3、5

本問の薬物は全て肝代謝型薬物であり、全身クリアランス(CLtot)と肝クリアランス(CLh)がほぼ等しい。さらに肝抽出率の大小により肝血流律速型薬物か肝代謝律速型薬物に分類され、肝抽出率が0.7より大きい薬物は肝血流律速型、0.3より小さい薬物は肝代謝律速型となる。以下の表に3つの薬物の特徴についてまとめる。
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1 誤
ニカルジピンは、肝血流律速型薬物であるため、肝クリアランス(CLh)は肝血流量(Qh)の影響を受ける。

2 誤
設問に、「定常状態における非結合形薬物濃度」とあり、平均血中濃度と記載がないことから点滴静注と推測されるが、繰り返し投与も想定して解説する。
定常状態における血中濃度(Css)は点滴静注の場合、①式で表される。
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繰り返し投与における定常状態の平均血中濃度(Css.av)は②式で表される。
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①式、②式より、肝血流律速型であるニカルジピンの定常状態における非結合形薬物濃度(fp・C)は、③式と④式で表される。

点滴静注の場合
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繰り返し投与の場合
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③式、④式より、ニカルジピンの定常状態における非結合形薬物濃度は、肝血流量が一定であれば、血漿タンパク結合率の変動による影響を受けることが分かる。

3 正
フェニトインとテオフィリンは、いずれも肝代謝律速型薬物であるため、肝クリアランス(CLh)は肝固有クリアランス(CLint.h)の影響を受ける。

4 誤
フェニトイン、テオフィリンなどの肝代謝律速型薬物については、血漿タンパク結合率の大小により血漿タンパク結合依存型か血漿タンパク結合非依存型に分類される。血漿タンパク結合率が0.8より大きい薬物(フェニトイン)は血漿タンパク結合依存型(fpの変動による影響が大きい)、0.8より小さい薬物(テオフィリン)は血漿タンパク結合非依存型(fpの変動による影響が小さい)となる。そのため、血漿タンパク質の減少による肝クリアランスへの影響は、テオフィリンよりフェニトインの方が大きい。

5 正
選択肢2と同様に、「定常状態における非結合形薬物濃度」とあり、平均血中濃度と記載がないことから点滴静注と推測されるが、繰り返し投与も想定して解説する。なお、テオフィリンには点滴静注製剤がないが、一様に両ケースについて解説しておく。
選択肢2の①式、②式より、肝代謝律速型であるフェニトイン、テオフィリンそれぞれの定常状態における非結合形薬物濃度(fp・C)は、⑤式、⑥式で表される。

点滴静注の場合
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繰り返し投与の場合
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⑤式、⑥式より、フェニトインとテオフィリンの定常状態における非結合形薬物濃度は、肝固有クリアランスが一定であれば、血漿タンパク結合率の変動による影響を受けないことが分かる。

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