令和07年度 第110回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 175

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問 175  正答率 : 42.3%

 国家試験問題

国家試験問題
体内動態が線形1−コンパートメントモデルに従い、生物学的半減期が1.4時間である薬物を、3種類の剤形で同用量を経口投与したとき、下表に示す血中濃度時間曲線下面積(AUC)と一次モーメント時間曲線下面積(AUMC)が得られた。この結果に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
ただし、絶対的バイオアベイラビリティはいずれも100%とし、ln2=0.693とする。

スクリーンショット 2025-06-03 12.52.57.png

1 最高血中濃度が最も大きいのは経口液剤である。


2 投与量を増やすと平均滞留時間は長くなる。


3 経口液剤を経口投与したときの平均吸収時間は約1.0 hである。


4 散剤の平均溶出時間は約0.5 hである。


5 錠剤の平均崩壊時間は約1.5 hである。

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問 175    

 e-REC解説

解答 1、3

一般に、錠剤を経口投与すると、液剤を経口投与する場合と比較して、崩壊・溶解に時間を要するため、薬物の血中への吸収までの時間が長くなるため、平均滞留時間(MRT)が長くなる。以下に剤形の違いによる、MRTについてのイメージ図を示す。

スクリーンショット 2025-06-03 12.54.32.png

平均滞留時間(MRT)は、血中濃度時間曲線下面積(AUC)と一次モーメント時間曲線下面積(AUMC)を用いて以下の式で表される。

スクリーンショット 2025-06-03 12.59.26.png


したがって、本問の薬物の経口液剤、散剤、錠剤のMRTは以下のようになる。

スクリーンショット 2025-06-03 13.00.00.png



1 正
経口投与時における最高血中濃度は以下の①式で表される。

スクリーンショット 2025-06-03 13.00.51.png

設問文よりバイオアベイラビリティは100%よりF=1となる。また、設問文より投与量、投与条件は同一であるため、Vd、Dpoは一定である。よって、経口投与時の最高血中濃度は①式から、吸収速度定数ka、消失速度定数kelによって決定される。
ここで、設問文よりこの薬物の消失半減期t1/2は1.4時間であるため、消失速度定数kelは以下の式で求められる。

スクリーンショット 2025-06-03 13.02.16.png

消失速度定数kelは薬物固有の値であり、剤形によって変化しない。そのため、①式は吸収速度定数kaが大きくなるほどCmaxは大きくなることが分かる。

また、経口投与時の平均滞留時間(MRT)は、kaとkelを用いると、以下の②式で表される。

スクリーンショット 2025-06-03 14.12.19.png

上で求めたそれぞれの剤形のMRTと②式を用いて剤形ごとの吸収速度定数kaを求める。

スクリーンショット 2025-06-03 14.14.10.png

以上より、経口液剤の吸収速度定数kaが最も大きいため、最高血中濃度も大きくなる。

2 誤
②式より、平均滞留時間(MRT)は吸収速度定数ka、消失速度定数kelのみで決定され、ka、kelは薬物固有の値であり、投与量の影響を受けない。
よって、投与量を増やしても平均滞留時間(MRT)は変化しない。

3 正
経口液剤の平均吸収時間(MAT)は以下のように表される。

スクリーンショット 2025-06-03 14.15.42.png

③より、ka液 =1.0 h-1であるからMAT =1.0 hとなる。

4 誤
散剤の平均溶出時間(MDT)は、散剤のMRTと液剤のMRTを用いると、以下の式で表すことができる。

MDT=MRT−MRT
ここで、上で求めたそれぞれの剤形のMRTを代入すると、以下の値となる。

MDT=4.5 h−3.0 h=1.5 h

5 誤
錠剤の平均崩壊時間(MDIT)は、錠剤のMRTと散剤のMRTを用いると、以下の式で表すことができる。

MDIT=MRT−MRT

ここで、上で求めたそれぞれの剤形のMRTを代入すると、以下の値となる。

MDIT=5.0 h−4.5 h=0.5 h

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