平成30年度 第103回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 192,193

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問 192  正答率 : 53.9%
問 193  正答率 : 58.4%

 国家試験問題

国家試験問題
医師から「2型糖尿病患者に脂質異常症治療薬Aを投与した際の、動脈硬化性疾患に対する予防効果(心血管疾患予防)について教えてほしい」と問合せがあった。薬剤師が文献調査をした結果、動脈硬化性疾患の既往歴がない2型糖尿病患者(40〜75歳)を、「A投与群」又は「A非投与群」の2群に無作為に割付し、心血管死、脳血管障害、急性冠症候群などの動脈硬化性の心血管イベントの発症率を比較した論文を得ることができた。平均追跡期間は5年で、図に示した結果が得られている。
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問192
得られた論文の批判的吟味に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 「情報の批判的吟味」はEBM実践のプロセスの最初のステップである。


2 臨床研究の手法が正しかったのか、得られた結果が信用できるのかといった研究成果の正確度や再現性について、外的妥当性を評価する。


3 この図の評価項目は、真のエンドポイントを用いていると考えられる。


4 この図から、ハザード比の95%信頼区間が1を挟んでいないこと及びp値から、両群間に統計学的に有意な差が見出されたといえる。


5 この図から、A投与群はA非投与群に比べ心血管イベントの発症リスクを81%減少させたと判断できる。




問193
前問のデータ解析方法に関する文中の[ ]に入る適切な語句はどれか。1つ選べ。
スクリーンショット 2018-08-10 14.36.09.png

1 ログランク検定


2 Kruskal-Wallis検定


3 Cox回帰分析


4 ロジスティック回帰分析


5 重回帰分析

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問 192    
問 193    

 e-REC解説

問192 解答 3、4

1 誤
EBM(Evidence-Based Medicine)は「根拠に基づく医療」と訳され、最新で最善の医療を根拠に基づいて行う行動指針のことであり、以下の5段階のステップに分かれる。
step 1:疑問(問題)の定式化
step 2:情報収集
step 3:情報の批判的吟味
step 4:情報の患者への適用
step 5:step 1~step 4のフィードバック
つまり、「情報の批判的吟味」はEBM実践のプロセスの3段階目のステップであり、最初のステップではない。

2 誤
臨床研究の手法が正しかったのか、得られた結果が信用できるのかといった研究成果の正確度や再現性について評価するというのは、内的妥当性(研究内部の妥当性)の評価にあたる。
なお、外的妥当性(適用の可能性)とは、得られた情報が眼前の患者に当てはまるかどうかをstep4の段階で検討することである。

3 正
脂質異常症治療薬を投与する際の真のエンドポイントは「動脈硬化性の心血管イベントの発症率の低下」である。この図は縦軸に「累積心血管イベント発症率」をとっているため、真のエンドポイントを用いていると考えられる。

4 正
ハザード比を用いた区間推定では、有意な差があると判断するためには、95%信頼区間が1を挟んでいないことや、p値が設定した有意水準よりも下回っている必要がある。
本文献では、95%信頼区間が0.69〜0.95と1を挟んでいないこと及びp値が0.001と有意水準0.05を下回っていることから、両群間に統計学的に有意な差が見出されたといえる。

5 誤
本文献ではハザード比が0.81であることから、A投与群は心血管イベントの発症リスクをA非投与群と比べて、「81%に減少させた」ということがいえる。つまり、発症リスクを100−81=19%減少させたと判断できる。


問193 解答 3

ある基準時点から、生存時間に影響を与えるイベントが発生するまでの時間に関する解析法を生存時間解析法という。生存時間解析法には、生存時間曲線の推定に用いられるカプラン・マイヤー法や、生存時間の解析の検定法であるログランク検定や、生存時間の解析の推定法であるCox回帰分析などがある。
今回は「ハザード比とその95%信頼区間を推定した。」とあることから、[ ]に入るのは、生存時間の解析の推定法であるCox回帰分析だと考えられる。

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