平成31年度 第104回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 206,207

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問 206  正答率 : 78.4%
問 207  正答率 : 68.4%

 国家試験問題

国家試験問題
60歳男性。体重50 kg、体表面積1.5 m2。再発直腸がんで外来通院しながら以下の化学療法(処方1、2)を受けることになり、化学療法施用当日の夕方17時に来院した。医師の指示のもと薬剤師が施用準備のため安全キャビネットでオキサリプラチン点滴静注液を輸液Aで希釈した。施用直前に患者が体調不良を訴えたため、翌日10時に再来し施用することになった。看護師は薬剤師に輸液Aで希釈したオキサリプラチン点滴静注液が翌日使用できることを確認し、速やかに冷所保存した。

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問206(実務)
薬剤師がオキサリプラチン点滴静注液の希釈に用いた輸液Aはどれか。1つ選べ。

1 5%ブドウ糖注射液 250 mL


2 乳酸リンゲル液 250 mL


3 生理食塩液 250 mL


4 7%炭酸水素ナトリウム注射液 250 mL


5 ビタミンB1・糖・電解質・アミノ酸液 500 mL




問207(物理・化学・生物)
オキサリプラチンの配位子及び配位子交換に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。

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1 オキサリプラチンは配位子交換を原因とする配合変化を受ける。


2 配位子Aよりも配位子Bの方が交換しやすい。


3 配位子交換の起こりやすさは、交換相手となる配位子の種類、溶媒のpH及び温度に依存する。


4 DNA塩基との間で配位子交換を通じて架橋構造を形成することにより、抗がん活性を示す。


5 配位子Bは、3つの立体異性体のうちの1つである。

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問 206    
問 207    

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問206 解答 1

オキサリプラチンは、塩化物イオン(Cl)濃度の高い溶液中では分解されてしまうため、乳酸リンゲル液(選択肢2)、生理食塩液(選択肢3)、ビタミンB1・糖・電解質・アミノ酸液(選択肢5)などの塩化物イオンを含有している輸液は希釈に用いない。また、オキサリプラチンは塩基性溶液でも分解が起こるため、7%炭酸水素ナトリウム注射液(選択肢4)の希釈には用いない。したがって、オキサリプラチン点滴静注液は、5%ブドウ糖注射液250 mL(選択肢1)で希釈するのが適切である。


問207 解答 2

オキサリプラチンは、白金(Pt)に配位子が結合した錯体医薬品である。オキサリプラチンは、細胞内において、水分子と配位子交換することにより、アクア錯体を形成し、腫瘍細胞のDNAと架橋形成することで、抗がん活性を示す。

1 正しい
オキサリプラチンは、配位子が結合した白金錯体であり、NaClを含有する生理食塩液と配合すると、シュウ酸から塩素へと配位子交換が起こり、配合変化の原因となる。
(生体内のオキサリプラチン)

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(生理食塩液中のオキサリプラチン)

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2 誤っている
配位子は、配位結合する際に非共有電子対を使い結合するため、配位子の求核性(塩基性)が高いほど配位子が中心金属に結合しやすく、解離しにくい。中心金属(Pt)に配位結合している配位子は、配位子A(シュウ酸エステル)と配位子B(シクロヘキサン−1,2−ジアミン)であり、塩基性が低いのは配位子Aであるため、配位子交換を受けて解離しやすいのは配位子Aである。

3 正しい
金属錯体の安定性は、中心金属及び配位子の安定性の影響を受けるため、交換相手となる配位子の種類、溶媒のpH及び温度などに依存する。

4 正しい
前記参照

5 正しい
配位子Bは、キラル炭素を2つ有し、メソ体が存在するため、配位子Bを含めた立体異性体は3つ存在する(下図参照)。

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