令和03年度 第106回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 206,207

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問 206  正答率 : 80.1%
問 207  正答率 : 67.9%

 国家試験問題

国家試験問題
問206〜207
76歳男性。体重50 kg。高血圧と心不全により入院となり、処方1が開始となった。入院時のeGFRは23.9 mL/min/1.73 m2であったが、尿量が増加し浮腫も徐々に改善して、状態も安定してきた。1週間後、便秘に対し処方2が開始となった。さらに1週間後、血清カリウム値が5.6 mEq/Lと上昇したため、経口ゼリー剤Aを追加した。

スクリーンショット 2021-06-30 15.45.55.png

問206(実務)
本症例において、注意する事項として正しいのはどれか。2つ選べ。

1 経口ゼリー剤Aを服用し忘れた場合、次回2回分服用する。


2 経口ゼリー剤A服用後、一度開封して残ったゼリーは冷所に保存する。


3 ジゴキシン中毒に注意する。


4 PT−INR値で出血の危険性をモニターする。


5 排便状況を確認する。




問207(物理・化学・生物)
経口ゼリー剤Aの成分の化学的性質に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 水溶性が高い。


2 陰イオン性を持つ。


3 カリウムイオンを吸着する。


4 塩化物イオンを吸着する。


5 キレート作用を持つ。

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問 206    
問 207    

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問206 解答 3、5

経口ゼリー剤Aは、血清カリウム値が上昇したことに対して処方されていることから、高カリウム血症改善薬であるポリスチレンスルホン酸カルシウムゼリーであると考えられる。

1 誤
ポリスチレンスルホン酸カルシウムゼリーを服用し忘れた場合、気づいた時に1回分を服用する。ただし、次の服用時間の近くで気づいた場合は、その回は服用せず、次の服用時間に1回分を服用する。なお、一度に2回分を服用してはならない。

2 誤
開封して残ったゼリーは、保存せずに廃棄する。

3 正
ジゴキシンは、Na,K−ATPaseを直接阻害することで、Na−Ca2+交換体を介して心筋細胞内Ca2+濃度を上昇させるため強心薬として作用する。
また、Na,K−ATPaseは、細胞内から3Naを汲み出して細胞外から2Kを汲み入れるため、細胞外のカリウム濃度が低下すると、Kによる駆動力が低下し、Na,K−ATPaseは機能しにくくなる。
したがって、ポリスチレンスルホン酸カルシウムゼリーのように低カリウム血症を起こす可能性のある薬物は、ジゴキシンのNa,K−ATPase阻害作用を強めてしまい、ジゴキシン中毒を引き起こす可能性があるため、併用時には注意が必要である。

4 誤
PT−INR値で出血の危険性をモニターする必要がある薬物はワルファリンである。本患者はワルファリンを服用していないため、PT−INR値をモニターする必要性は低い。

5 正
ポリスチレンスルホン酸カルシウムゼリーは、服用時に腸管穿孔、腸閉塞、大腸潰瘍などの副作用があらわれることがある。したがって、患者には服用期間中の排便状況(排便の有無、便の状態・色など)を確認するとともに、便秘の悪化、腹部膨満感、腹痛が続く、嘔吐、血の混じった便などの症状があらわれたら、服用を中止し、受診するよう指導する。


問207 解答 2、3

ポリスチレンスルホン酸カルシウムは、下記の部分構造を有する陽イオン交換樹脂であり、水溶性は低く、自身は陰イオン性を持つ。
スクリーンショット 2021-06-30 15.47.00.png

ポリスチレンスルホン酸カルシウムは、消化・吸収されることなく腸管内を移行し、腸管内に存在するカリウムイオンと自身の持つカルシウムイオンを交換することでカリウムイオンを吸着し、そのまま糞便中に排泄されることで血清カリウム値を低下させる。

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