平成31年度 第104回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 210,211

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問 210  正答率 : 78.6%
問 211  正答率 : 57.0%

 国家試験問題

国家試験問題
35歳女性。数日前から咳き込むようになった。市販の咳止め薬を服用していたが、治まらないので病院を受診したところ、呼吸器科で気管支ぜん息と診断され、以下の処方せんを持って薬局を訪れた。薬剤師が面談したところ、過去に内服ステロイド薬により満月様顔貌(ムーンフェイス)をどの副作用を経験したことが分かった。今回処方された吸入ステロイド薬についても副作用を心配している。なお、この女性は今回初めて吸入薬を使用する。

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問210(実務)
この患者に対する服薬指導として適切なのはどれか。2つ選べ。

1 この吸入薬は、内服ステロイド薬よりムーンフェイスになりにくいです。


2 吸入後にうがいをすると効果が減弱するので、うがいをしないで下さい。


3 ピークフローメーターにより得られた測定値と測定時の症状を、ぜん息日記に記載してください。


4 この吸入薬は咳が出なくなったら、吸入しなくても良いです。


5 この吸入薬は咳がさらにひどくなった場合、追加で1日3回まで吸入しても良いです。




問211(物理・化学・生物)
ブデソニドは肝臓において、活性が低く水溶性の高い代謝物に代謝され、速やかに排泄される。主な代謝経路で起こる反応について正しいのはどれか。1つ選べ。

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1 アセタール構造が開裂する。


2 α−ヒドロキシケトン構造が互変異性を起こす。


3 1位の二重結合が還元される。


4 11位のヒドロキシ基が脱離する。


5 21位のヒドロキシ基が酸化される

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問 210    
問 211    

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問210 解答 1、3

1 適切
本薬剤は、局所抗炎症作用を示し、全身作用が少ない吸入薬である。そのため、本剤は内服ステロイド薬と比べると全身性副作用のムーンフェイスを起こしにくい。

2 不適切
本剤を吸入し、口腔内に薬剤が残ることで、口腔内カンジダ症や嗄声などの副作用が現れることがある。そのため、本剤吸入後は、うがいを数回して薬剤を流すよう指導する必要がある。

3 適切
ピークフローメーターとは、最大呼気流量(ピークフロー値)を測定するための器具であり、これにより測定されたピークフロー値は、気道閉塞状態を反映する指標として用いられる。これを毎日朝と夜の決まった時間に測定し記録することで、ぜん息発作の状態を把握でき、その後の治療計画においての重要な情報源とできるため、ぜん息日記に記載を促す必要がある。

4 不適切
本剤は、慢性的な気道の炎症を持続的に抑えることで、ぜん息発作を抑える長期管理薬(コントローラー)であり、発作の症状を速やかに改善することを目的とした薬剤(リリーバー)ではない。また、自覚症状がないからといって突然中止すると、本剤により抑えられていた気道の炎症が進行ることにより、ぜん息症状が悪化したり、発作回数が増加する可能性があるため、医師の指示なく服用を中止しないよう説明する必要がある。

5 不適切
本剤は、ぜん息発作時に適宜使用するものではなく、医師の指示なく患者の判断で吸入回数を増やすべきでもないため、本選択肢のような指導を行うことは不適切である。


問211 解答 1

本問に、「活性が低く水溶性の高い代謝物に代謝され、速やかに排泄される。」とあることから、本反応では水溶性が高くはなかった構造が水溶性が高い構造に変化したと考えられる。

1 正
一般に、−OH基や−NH2基などの極性をもつ置換基の割合が多くなると、物質の水溶性が上がる。ブデソニドのアセタール構造が加水分解されて開裂すると、ヒドロキシ基が2つ増えて水溶性は増加する。

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2 誤

ブデソニドの17位のα−ヒドロキシケトンのケト−エノール互変異性は、代謝経路ではなく、水溶性もほとんど変化しない。

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3 誤
ブデソニドの1位の二重結合が還元は、代謝経路ではなく、還元されても水溶性は増加しない。

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4 誤
ブデソニドの11位のヒドロキシ基の脱離は、代謝経路ではなく、11位のヒドロキシ基が脱離すると、水溶性は低下する。

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5 誤
ブデソニドの21位のヒドロキシ基が酸化は代謝経路ではなく、アルデヒド基へと酸化された場合、水溶性は低下する。
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