平成25年度 第98回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 210,211

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問 210  正答率 : 50.5%
問 211  正答率 : 55.6%

 国家試験問題

国家試験問題
腎機能が低下した患者では、溶解補助剤であるヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが蓄積することにより腎機能がさらに悪化することがある。

問210(実務)
この溶解補助剤が用いられている注射剤はどれか。1つ選べ。ただし、(   )内は有効成分名を示す。

1 ホスミシンS静注用1 g(ホスホマイシンナトリウム)


2 オメプラール注用20(オメプラゾールナトリウム)


3 イトリゾール注1%(イトラコナゾール)


4 セフメタゾン静注用0.5 g(セフメタゾールナトリウム)


5 硫酸カナマイシン注射液1000 mg(カナマイシン硫酸塩)




問211(物理・化学・生物)
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンはβ−シクロデキストリン(β−CD)の誘導体である。β−CDに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
スクリーンショット 2017-04-18 16.43.03.png

1 β−CDは7つのグルコースから構成されている。


2 単糖間は、すべてβ−グリコシド結合でつながっている。


3 β−CDやクラウンエーテルのように、分子の空孔に他の分子を取り込む現象を抱合という。


4 β−CDは外側が親水性で、空孔に疎水性の化合物を取り込み可溶化する。

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問 210    
問 211    

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問210 解答 3

シクロデキストリンに関する問題である。構造式がわからなくても選択肢に記載されている有効成分名から正解に導くことが出来る。
一般に医薬品はその水溶性を向上させるため、塩になっているものが多く、この場合は溶解補助剤を必要としない。例えば、酸性の化合物はNaOHで処理することで『○○○ナトリウム』、塩基性化合物は酸で処理することで『○○○塩酸塩』、『×××硫酸塩』として市販されている。有効成分で塩になっていない選択肢は3のみであり、これが正解であると推察できる(構造式は以下参照)。中性の有機化合物はそのような処理ができないため、水への溶解性に問題がある場合は溶解補助剤を用いる場合がある。
スクリーンショット 2017-04-18 16.44.12.png

問211 解答 1、4

1 正
図より7つのグルコースが結合しているものであることがわかる。グルコースはいす型のコンホメーションで記載した場合に、1位(アノマー炭素)以外の置換基がすべてエクアトリアルになるのが特徴である。なお、グルコースが6個環状に結合したものがα−シクロデキストリン、8個結合しているものがγ−シクロデキストリンと呼ばれている。
スクリーンショット 2017-04-18 16.44.57.png

2 誤
α−グルコースはアノマー炭素の水酸基(OH)がアキシアルであり、β−グルコースはエクアトリアルである。図よりすべてα−グリコシド結合で繋がっているものであると判断できる。

3 誤
分子の空孔に他の分子を取り込む現象は包接という。抱合は主に薬物の代謝に関係する過程であり、硫酸抱合、グルクロン酸抱合、グルタチオン抱合などが有名である。共有結合によって親水性分子が付加され、水溶性が向上し尿中へと排泄されやすくなる。

4 正
β−CDは外側がグルコースの水酸基(OH)によって親水性である。空孔は疎水性であり、イトラコナゾールのような有機化合物を取り込む。結果として、有機化合物の水への溶解性が向上する。

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