令和02年度 第105回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 212,213

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問 212  正答率 : 74.2%
問 213  正答率 : 56.1%

 国家試験問題

国家試験問題
35歳女性。肺動脈性肺高血圧症のためにイロプロスト吸入液を使用していた。しかし、仕事で出張が多くネブライザーを持ち歩いての使用に不都合があるため、下記の薬剤へ変更となった。
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問212(実務)
薬剤師が行う患者への説明として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 副作用として頭痛が起こることがあります。


2 血液を固まりやすくする作用があります。


3 噛まずに服用してください。


4 妊娠していても服用可能です。




問213(物理・化学・生物)
イロプロストやベラプロストナトリウムはプロスタグランジンI2の構造をもとに開発された薬物である。これらに関する記述のうち、最も適切なのはどれか。2つ選べ。
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1 イロプロストはプロスタグランジンI2の部分構造aの酸素原子を炭素原子に置換することにより、シトクロムP450による代謝を受けやすくしている。
2 ベラプロストナトリウムはプロスタグランジンI2のプロドラッグである。
3 ベラプロストナトリウムはカルボン酸部位を塩とすることにより、水溶性を向上させている。
4 プロスタグランジンI2の部分構造aの二重結合の立体化学はE配置である。

5 ベラプロストナトリウムはプロスタグランジンI2の部分構造aに芳香環を導入することにより、酸性条件下での安定性を向上させている。

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問 212    
問 213    

 e-REC解説

問212 解答 1、3

ベラプロストナトリウムは、プロスタグランジンI2(PGI2)誘導体であり、血管平滑筋や血小板のPGI2受容体を刺激することで血管拡張作用や抗血小板作用などを示し、肺動脈性肺高血圧症の治療に用いられる。

1 正
本剤の副作用に頭痛があるため、副作用として頭痛が起こることがある旨を説明する。

2 誤
本剤は抗血小板作用を有するため、血液を固まりにくくする作用がある旨を説明する。

3 正
本剤は徐放錠であるため、噛まずに服用する旨を説明する。

4 誤
本剤は妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に禁忌であるため、妊娠している場合は、服用できない旨を説明する。


問213 解答 3、5

1 誤
イロプロストは、PGI2の部分構造aの酸素原子を炭素原子に置換することにより、シトクロムP450による代謝を受けにくくし、高い安定性と長い半減期を獲得した合成PGI2誘導体である。

2 誤
プロドラッグとは、生体内で活性代謝物に変換され、薬理作用を示す医薬品のことである。ベラプロストナトリウムは、PGI2と異なる骨格を有するため、生体内で活性代謝物のPGI2に変換されることはない。したがって、ベラプロストナトリウムはPGI2のプロドラッグではない。

3 正
ベラプロストナトリウムは、カルボン酸部位をナトリウム塩とすることにより、水溶性を向上させた薬物である。

4 誤
PGI2の部分構造aの二重結合の立体化学は Z 配置である。
スクリーンショット 2020-06-29 10.17.04.png

5 正
PGI2の部分構造aは、エノール(C=C-OH)に類似した構造を有するため不安定である。ベラプロストナトリウムは、PGI2の部分構造aに芳香環を導入することで、安定性を向上させている。

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