令和03年度 第106回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 216,217

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問 216  正答率 : 56.2%
問 217  正答率 : 65.7%

 国家試験問題

国家試験問題
75歳男性。3年前にパーキンソン病と診断され、レボドパ100 mg・カルビドパ配合錠 1日3錠、トリヘキシフェニジル塩酸塩錠2 mg 1日3錠で薬物治療を継続していた。3ヶ月前にレボドパ100 mg・カルビドパ配合錠が1日5錠に増量になり(処方1)、さらに、今回から処方3が追加になった。処方2は、用法・用量の変更はなく継続中である。
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問216(実務)
患者の家族が薬局に処方箋を持参した。薬剤師が家族に行う説明として適切なのはどれか。2つ選べ。

1 処方1は胃腸障害を起こしやすいので、牛乳と一緒に服用しても構いません。


2 体の一部が自然に動いてしまう不随意運動を抑えるため、処方3が追加になりました。


3 処方3の影響で、暴食を繰り返すような行動が現れることがあるので、そのような症状が現れた場合は主治医に連絡してください。


4 処方3により眠気が現れることがあるので、自動車等の運転は避けるようにしてください。


5 パーキンソン病の症状が改善されたら、直ちに処方3の薬剤の服用を中止してください。




問217(物理・化学・生物)
この患者に起きていると考えられる生体内変化はどれか。2つ選べ。

1 黒質から線条体に至るドパミン作動性神経の変性が進行した。


2 線条体におけるコリン作動性神経からのアセチルコリン放出が減少した。


3 線条体で放出されたドパミンの分解が低下した。


4 線条体におけるコリン作動性神経のドパミンによる抑制が減弱した。


5 末梢血液中のドパ脱炭酸酵素活性が低下した。

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問 216    
問 217    

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問216 解答 3、4

本患者のパーキンソン病の治療において、3ヶ月前にレボドパ・カルビドパ配合錠が増量されたことから、wearing off現象(レボドパの薬効時間短縮)を呈していると考えられる。また、ドパミンD2受容体刺激薬のプラミペキソールは、パーキンソン病の治療効果を高めるために今回追加処方されたと考えられる。

1 正
レボドパ・カルビドパ配合錠は、牛乳などの乳製品で服用すると吸収が低下し、期待した効果が得られない可能性があるため、薬剤師が家族に行う説明としては不適切である。

2 誤
問題文中の「体の一部が自然に動いてしまう不随意運動」はドパミンの作用が過剰になることが原因とされるジスキネジアのことを示し、主に線条体でのドパミン過剰により起こると考えられている。ジスキネジアが生じた場合の対応としては、まずレボドパの1日量を減量することが最優先であるが、今回の変更時にレボドパが減量されていないことから、ジスキネジアの対応のための処方変更ではないと考えられる。よって、今回追加処方されたプラミペキソールは、パーキンソン病の治療効果を高めるためであり、薬剤師が家族に行う説明としては不適切である。

3 正
暴食や病的賭博などの衝動制御障害は、プラミペキソールの副作用の1つである。そのため、そのような症状が現れた場合は主治医に連絡してくださいと薬剤師が家族に説明を行うことは適切である。

4 正
前兆のない突発的睡眠は、プラミペキソールの重大な副作用である。そのため、薬剤師が家族に自動車の運転等を避けるよう説明を行うことは適切である。

5 誤
パーキンソン病の症状が改善し処方薬を変更する場合は、医師の指示に基づき行う必要がある。また、急激なプラミペキソール塩酸塩水和物徐放錠の投与中止により、悪性症候群や薬剤離脱症候群が現れることがあるため、薬剤師が家族に行う説明としては不適切である。


問217 解答 1、4

パーキンソン病は、大脳基底核の錐体外路系中の黒質-線条体において、黒質由来のドパミン作動性神経の変性により、線条体でのドパミンの作用が著しく低下し、相対的にコリン作動性神経の活動が強くなっている状態である。本患者は、レボドパの増量やプラミペキソールの追加などの経緯から、パーキンソン病の症状が進行(症状が悪化)していると推察される。

1 正
パーキンソン病の原因と、症状が進行していることを考慮すると、黒質から線条体に至るドパミン作動性神経の変性が進行している可能性は高い。

2 誤
パーキンソン病の原因と、症状が進行していることを考慮すると、線条体におけるコリン作動性神経からのアセチルコリン放出が減少は考えにくく、むしろ相対的なコリン作動性神経の活動がより強くなっている可能性が高い。

3 誤
パーキンソン病の原因と、症状が進行していることを考慮すると、線条体で放出されたドパミンの分解が低下(ドパミン作用が増強)しているとは考えにくく、むしろドパミンの作用は減弱している可能性が高い。

4 正
パーキンソン病の原因と、症状が進行していることを考慮すると、線条体におけるコリン作動性神経のドパミンによる抑制が減弱し、相対的なコリン作動性神経の活動がより強くなっている可能性は高い。

5 誤
パーキンソン病の原因と、症状が進行していることを考慮すると、末梢血液中のドパ脱炭酸酵素活性が低下(ドパミンの中枢移行量が増加)しているとは考えにくく、むしろ中枢神経内のドパ脱炭酸酵素活性が低下(ドパミンの作用が減弱)している可能性が高い。

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