平成29年度 第102回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 218,219

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問 218  正答率 : 50.3%
問 219  正答率 : 71.7%

 国家試験問題

国家試験問題
75歳女性。脳梗塞で寝たきりとなり、仙骨部に褥瘡を形成したことから、褥瘡対策チームが対応した。なお、本患者には、心機能、肝機能、腎機能及び甲状腺機能の低下や各臓器からの出血はいずれも認められていなかった。

問218(物理・化学・生物)
下図は褥瘡の治癒過程(①〜④)の模式図である。下記の治癒過程に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
スクリーンショット 2017-12-13 17.57.10.png


1 ②及び③の創傷部周囲から肉芽部へ線維芽細胞が移動し、増殖する。


2 ③における肉芽の増生には、コラーゲンの生合成促進が関わる。


3 治癒の過程においては、毛細血管の新生が表皮で起こる。


4 主に真皮に存在する細胞が増殖し、④において上皮を再生する。


5 ケラチンを合成する細胞は、主に皮下組織に存在する。




問219(実務)
褥瘡患部は、乾燥した厚い黒色壊死組織を形成し(黒色期)、滲出液はほとんどなかった。褥瘡対策チームにおいて薬剤師が処方薬を提案し、下記の経緯で治癒に至った。A〜Cに入る薬剤として最も適切な組合せはどれか。1つ選べ。

  A   が処方され、数日間塗布した後、医師により壊死組織が切除された。その後、黄色壊死組織(黄色期)はわずかになり滲出液を伴う赤色肉芽が見られたため(赤色期)、滲出液の吸収・肉芽形成を目的として、  B   へ処方変更となった。  B   は、ガーゼに薄くのばして、貼付した。数日後、肉芽が盛り上がり滲出液は減少してきた。湿潤を保持しながら創傷部周囲からの上皮化(白色期)を促進させる目的で  C   を塗布し、治癒へと至った。
スクリーンショット 2017-12-13 17.59.11.png

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問 218    
問 219    

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問218 解答 1、2

褥瘡は、寝たきりなど同じ姿勢を長時間保つことで、局所に負荷がかかり続け皮膚組織が虚血状態となり、組織の壊死や潰瘍形成などが引き起こされた状態である。
褥瘡の治癒過程と主な薬物治療を下記にまとめる。

①黒色期:患部に黒色壊死組織が見られる。壊死組織の除去が治療の中心となる。
薬物治療:壊死組織軟化作用及び抗菌作用を有するスルファジアジン銀クリームや、創傷面の壊死組織の分解作用を有するブロメライン軟膏などが用いられる。
②黄色期:黒色壊死組織が取り除かれ、黄色の壊死組織や不良肉芽の露出や滲出液の産生が盛んになる。
薬物治療:黒色期に準じる。
③赤色期:黄色壊死組織が取り除かれ、線維芽細胞や毛細血管が豊富な良性肉芽の露出がみられる。
薬物治療:滲出液の吸水作用、抗菌作用や肉芽形成促進作用を有する精製白糖・ポビドンヨード配合軟膏や、局所循環改善作用、肉芽・上皮形成促進作用などを有するアルプロスタジルアルファデクス軟膏などが用いられる。
④白色期:上皮組織(表皮)が形成され創傷部が塞がる。
薬物治療:赤色期に準じる。

1 正
②黄色期と③赤色期においては、創傷部周囲の真皮などに存在する線維芽細胞が肉芽部へ移動し、線維芽細胞はコラーゲンを合成・分泌することで肉芽組織を形成する。

2 正
解説1参照

3 誤
治癒の過程において、毛細血管の新生は真皮や皮下組織で起こる。表皮は上皮組織で構成され、細胞どうしが密着しているため毛細血管が入り込めず存在しない。

4 誤
④白色期では、表皮の基底層に存在する幹細胞が増殖することで上皮を再生する。

5 誤
ケラチンを合成するケラチノサイトは、表皮に存在する。


問219 解答 3

前問解説より、黒色期などで処方される  A   はスルファジアジン銀クリーム、滲出液の吸収・肉芽形成を目的として処方される  B   は精製白糖・ポビドンヨード配合軟膏、上皮・肉芽形成を促進する目的で処方される  C   はアルプロスタジルアルファデクス軟膏が該当する。

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