平成29年度 第102回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 220,221

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問 220  正答率 : 77.0%
問 221  正答率 : 47.4%

 国家試験問題

国家試験問題
22歳女性。統合失調症のため病院の精神科へ通院している。母親が薬局を訪れ、「娘が薬を時々飲み忘れて、症状が安定しないことから、リスペリドン持効性懸濁注射液を注射された。」と薬剤師に伝えた。また、母親は下記の処方せんを見て、注射剤と同じ薬物が内服薬としても処方されていることに疑問をもち、今後の薬物治療について薬剤師に質問した。
スクリーンショット 2017-12-13 18.17.35.png
なお、リスペリドン持効性懸濁注射液の添付文書には、次の2つのグラフが掲載されている(一部改変)。
スクリーンショット 2017-12-13 18.37.58.png

問220(実務)
母親に対する薬剤師の説明として適切なのはどれか。2つ選べ。

1 症状が重くなったので、持効性懸濁注射液と内服薬を併用しています。


2 持効性懸濁注射液の効果は、投与3週間を過ぎたころから現れることから、それまでは内服薬も服用します。


3 症状が安定するようであれば、今後、注射は2週間毎になります。


4 持効性懸濁注射液の効果が十分でない場合は、本剤を静脈内に投与される場合があります。




問221(物理・化学・生物)
統合失調症では、様々な神経伝達物質との関連が示唆されている。神経伝達物質に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 ノルアドレナリンの水酸化によりドパミンが生合成される。
2 ドパミンは、酸化的脱アミノ化と水酸基のメチル化により代謝される。
3 セロトニンは、フェニルアラニンの水酸化と脱炭酸反応により生合成される。
4 グルタミン酸は、アスパラギン酸のアミノ基がオキサロ酢酸に転移されて生合成される。

5 グルタミン酸受容体は、イオンチャネル型と代謝調節型に分類される。

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問 220    
問 221    

 e-REC解説

問220 解答 2、3

1 誤
本症例では、問題文中に「薬を時々飲み忘れて、症状が安定しない」という記載があることから、症状が重くなったわけではないことが分かる。飲み忘れの問題を解決するために、持効性懸濁注射液が注射されたが、1つ目のグラフより持効性懸濁注射液を筋肉内投与した場合、血漿中薬物濃度の上昇に約3週間(21日間)かかることが読み取れ、それまでの症状改善のために同じ薬物の内服薬が処方されていると考えられるため、母親にはその旨を説明する必要がある。

2 正
解説1参照

3 正
2つ目のグラフより、注射液を2週間毎に投与した場合に安定した血漿中薬物濃度が得られていることが読み取れる。そのため、症状が安定するようであれば、今後、注射は2週間毎になることを説明する。

4 誤
本剤は、臀部筋肉内のみに投与し、静脈内に投与した場合、肺等の臓器に微小塞栓を誘発するおそれがあるため、静脈内には絶対に投与しないこととされている。


問221 解答 2、5

1 誤
ドパの脱炭酸によりドパミンが生合成され、ドパミンの水酸化によりノルアドレナリンが生合成される。

2 正
ドパミンなどのカテコールアミンは、モノアミンオキシダーゼ(MAO)による酸化的脱アミノ化とカテコール−O−メチルトランスフェラーゼ(COMT)による水酸基のメチル化により代謝される。

3 誤
セロトニン(5−HT:5−ヒドロキシトリプタミン)は、トリプトファンの水酸化と脱炭酸反応により生合成される。

4 誤
グルタミン酸は、アスパラギン酸のアミノ基がα−ケトグルタル酸に転移されて生合成される。

5 正
グルタミン酸受容体は、イオンチャネル型と代謝調節型に分類される。イオンチャネル型受容体としては、NMDA型受容体、AMPA型受容体などがあり、代謝調節型としては、mGlu受容体(Gタンパク質共役型受容体)がある。

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