令和05年度 第108回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 220,221

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問 220  正答率 : 74.1%
問 221  正答率 : 62.0%

 国家試験問題

国家試験問題
66歳男性。C型肝炎の既往歴あり。今回、肝硬変によると思われる腹水が出現し、肝性脳症の症状もみられたので、消化器内科に入院し治療している。現在の処方は以下のとおりである。

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問220(実務)
現在の薬物治療について、この患者への説明として誤っているのはどれか。1つ選べ。

1 トルバプタンは、腹部などに溜まった余分な水を尿として排泄する働きがあります。


2 ランソプラゾールは、食道・胃静脈瘤の治療期間中の潰瘍を予防する働きがあります。


3 スピロノラクトンは、肝性脳症を改善する働きがあります。


4 ラクツロースシロップは、腸管内でのアンモニアの発生及び吸収を抑制する働きがあります。


5 ナルフラフィンは、かゆみを改善する働きがあります。




問221(物理・化学・生物)
この患者に補充している分岐鎖アミノ酸に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 筋肉ではエネルギー源として利用される。


2 主に肝臓において異化を受ける。


3 該当するアミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、プロリンである。


4 すべて糖原性アミノ酸である。


5 肝機能低下時には消費が増し、芳香族アミノ酸に対する比率が低下する。

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問 220    
問 221    

 e-REC解説

問220 解答 3

1 正しい
トルバプタンは、腎集合管のバソプレシンV2受容体を遮断することで、腎集合管での水の再吸収を抑制し利尿作用を示す。そのため本剤は、肝硬変における体液貯留の改善に適応を有するため、本患者への説明として適切である。

2 正しい
ランソプラゾールは、プロトンポンプを阻害することで胃酸分泌を抑制し、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの再発予防に用いられる。肝硬変では食道・胃静脈瘤に伴う潰瘍を生じることがあるため、本患者への説明として適切である。

3 誤っている
スピロノラクトンは抗アルドステロン性利尿薬であり、肝硬変に伴う浮腫腹水の改善などに用いられる。など、本処方中、肝性脳症の改善を目的に処方されている薬物は、分岐鎖アミノ酸製剤やラクツロースであるため、本患者への説明としては不適切である。(解説4参照)

4 正しい
ラクツロースは合成二糖類であり、下部消化管にて腸内細菌により乳酸などに分解され、アンモニアの産生および吸収を抑制することで高アンモニア血症に伴う肝性脳症の改善に用いられるため、本患者への説明として適切である。

5 正しい
ナルフラフィンはオピオイドκ受容体作動薬であり、慢性肝疾患患者の掻痒症の改善に用いられるため、本患者への説明として適切である。


問221 解答 1、5

1 正
分岐鎖アミノ酸は、肝臓ではほとんど代謝されず、主に筋肉において代謝されエネルギー源となる。なお、芳香族アミノ酸は、主に肝臓において代謝されエネルギー源となる。

2 誤
解説1参照

3 誤
分岐鎖アミノ酸は、側鎖に分岐アルキル基を有するアミノ酸であり、バリン、ロイシン、イソロイシンが該当する。

4 誤
分岐鎖アミノ酸の中で、糖原性アミノ酸に該当するのはバリンとイソロイシンである。なお、ロイシンはケト原性アミノ酸である。

5 正
肝機能低下時は芳香族アミノ酸の代謝が低下し、代償的に筋肉での分岐鎖アミノ酸の消費が増大する。

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