令和06年度 第109回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 220,221

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問 220  正答率 : 52.0%
問 221  正答率 : 60.1%

 国家試験問題

国家試験問題
89歳女性。体重40 kg。高血圧症及び慢性心不全に対して処方1で薬物治療を行っている。独居で入院拒否があるため、医師と薬剤師、看護師が訪問している。最近、下腿浮腫が出現し、労作時の息苦しさや疲労感が強くなってきたため、血液検査を実施したところ、脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT−proBNP)値が3ヶ月前の450 pg/mLから下記の検査値になっていた。

スクリーンショット 2024-07-05 11.08.01.png


その後、訪問医は継続中だった処方1のうち、エナラプリルのみを中止して、新たに処方2を追加した。

スクリーンショット 2024-07-05 11.08.41.png

問220(物理・化学・生物)
下図は、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の生成と代謝の過程を示している。BNPは、mRNAからBNP前駆体タンパク質として翻訳された後、切断されて血中に分泌される。サクビトリルが阻害する酵素ネプリライシンの作用部位は、切断1〜3のいずれかである。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

スクリーンショット 2024-07-05 11.09.57.png


1 BNPとNT−proBNPは、主に心室から分泌される。


2 NT−proBNPは、図のペプチドAである。


3 BNPは、NT−proBNPよりも血液中での安定性が高い。


4 ネプリライシンの作用部位は、切断3である。


5 NT−proBNPは、BNPと同様に腎臓に作用してNaの尿中への排出を促進する。




問221(実務)
処方2の薬剤の服用によって生じる可能性が高いのはどれか。2つ選べ。

1 血中TSH値の上昇


2 高カリウム血症


3 血圧上昇


4 血中NT−proBNP値の上昇


5 脱水症状

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問 220    
問 221    

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問220 解答 1、4

脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は、主に心室において合成・分泌される、利尿作用、血管拡張作用を有するホルモンである。心室に負荷がかかると、心室筋細胞においてBNP前駆体タンパク質(pre−proBNP)が合成され、その後、一部が切断されproBNPが合成される。さらにproBNPは、生理活性を有するBNPと生理活性を有さないNT−proBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチドN端フラグメント)に切断され、血中に分泌される。

1 正
前記参照

2 誤
前記参照。NT−proBNPは、図のペプチドBである。

3 誤
BNPは、ネプリライシンなどの酵素により分解されるため、NT−proBNPよりも血液中での安定性が低い。

4 正
解説3参照

5 誤
前記参照。NT−proBNPは、BNPと異なり利尿作用や血管拡張作用などの生理作用を有さない。なお、NT−proBNPは、血中半減期が長いため、心不全のマーカーとして有用である。


問221 解答 2、5

サクビトリルバルサルタンは、ネプリライシン阻害作用を有するサクビトリルと、アンギオテンシンAT1受容体遮断作用を有するバルサルタンに解離し、それぞれの生理作用を発現する。
サクビトリルはBNPの分解を阻害することで、BNPの利尿作用や血管拡張作用を増強するため、副作用として脱水が生じる可能性がある。また、バルサルタンは、副腎皮質球状層からのアルドステロンの分泌を抑制することで、腎臓でのカリウムの排泄が抑制するため、副作用として高カリウム血症が生じる可能性がある。

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