平成31年度 第104回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 224,225

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問 224  正答率 : 92.6%
問 225  正答率 : 87.8%

 国家試験問題

国家試験問題
7歳女児。卵アレルギーがある。小学校で給食を食べた直後、女児が異常を訴えた。ゼーゼーとした呼吸音(喘鳴)、皮膚の赤み、唇とまぶたの赤みを担任教諭が確認し、アドレナリン注射液(エピペン®注射液)を投与して、その後の適切な対応により改善した。この女児が引越しに伴い転校することになり、転校先の学校に母親より女児の受け入れ後の対応について相談があった。

問224(物理・化学・生物)
この女児の症状を引き起こした生体内反応として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1 卵由来のアレルゲンと結合した細胞外マトリックス成分に対する抗体(IgG)により、抗体依存性細胞障害が起きた。


2 卵由来のアレルゲンに対する抗体(IgGやIgM)が免疫複合体を形成して組織に沈着し、補体を活性化した。


3 肥満細胞上の抗体(IgE)に卵由来のアレルゲンが結合して、肥満細胞の活性化を引き起こし、ケミカルメデイエーターが放出された。


4 卵由来のアレルゲンを認識したT細胞が炎症性サイトカインを放出し、マクロファージを活性化した。


5 卵由来のアレルゲンと結合した抗体により、NK細胞が活性化した。




問225(実務)
この相談を受け、万が一に備えて小学校から学校薬剤師にアドレナリン注射液(エピペン®注射液)の使用法講習の依頼があった。学校薬剤師が説明する重要なポイントとして、誤っているのはどれか。1つ選べ。

1 アナフイラキシーの初期症状が現れたら、ショック症状が発現する前に投与する。


2 正しい持ち方は、図のとおりである。


3 注射部位に垂直になるようにし、強く押し付ける。


4 お尻に注射する。


5 緊急時には、衣服の上からでも注射することができる。


スクリーンショット 2019-08-27 18.13.03.png

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問 224    
問 225    

 e-REC解説

問224 解答 3

卵アレルギーは、食物アレルギーの一種であり、Ⅰ型アレルギーに分類される。本症例の女児は、給食後に喘鳴、皮膚の赤み、唇とまぶたの赤みがでているため、給食に含まれる卵成分によりアナフィラキシーが現れたと推測される。また、Ⅰ〜Ⅲ型アレルギーは抗体が関与する即時型アレルギーであり、Ⅳ型アレルギーはT細胞を主体とする細胞性免疫が関与する遅延型アレルギーである。

1 誤
Ⅱ型アレルギーの発症機序に関する記述である。Ⅱ型アレルギーは、細胞や組織に抗原が結合し、その抗原に対して抗体(IgGやIgM)が反応し、そこに補体が結合することにより細胞障害を引き起こす。また、細胞膜抗原に結合したIgG抗体に対して、IgGFcレセプターをもったマクロファージ、キラーT細胞、ナチュラルキラーT細胞(NK細胞)などが結合して標的細胞を傷害する抗体依存性細胞性細胞障害反応(ADCC)もⅡ型アレルギーに含まれる。

2 誤
Ⅲ型アレルギーの発症機序に関する記述である。Ⅲ型アレルギーは、抗原に対し抗体(IgGやIgM)が結合し、免疫複合体を形成する。免疫複合体は補体を活性化し、組織に沈着することで細胞障害を引き起こす。

3 正
Ⅰ型アレルギーの発症機序に関する記述である。肥満細胞に結合したIgE抗体に対して、アレルゲン(抗原)が結合すると、肥満細胞からヒスタミンなどのケミカルメディエーターが遊離し、各組織において平滑筋収縮、血管透過性亢進、腺分泌亢進などをきたしアレルギー反応を引き起こす。

4 誤
Ⅳ型アレルギーの発症機序に関する記述である。Ⅳ型アレルギーは、抗原を認識したT細胞がサイトカインを放出し、マクロファージ、好中球、キラーT細胞などが活性化された結果、細胞障害を引き起こす。

5 誤
Ⅱ型アレルギーの発症機序に関する記述である。(解説1参照)。


問225 解答 4

1 正しい
アドレナリン注射液(エピペン®注射液)は、アナフィラキシーが現れた際に使用し、医師の治療を受けるまでの間、アナフィラキシー症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療剤である。
エピペン®が処方されている患者で以下の症状が1つでも認められたら、可能な限り早期にエピペン®を注射する。
スクリーンショット 2019-08-27 18.23.20.png



2 正しい
先端に指を押し当てると針が出てくる危険性があるため、注射筒の中心部分をしっかりと握ることが、誤注射を防ぐ正しい持ち方である。

3 正しい
本剤を注射する際は、以下の点に留意する必要がある。
①エピペン®の上下先端のどちらかにも親指をかけないように握る
②太ももの前外側以外には注射しない
③投与部位が動かないようにしっかり押さえる
④太ももにエピペン®を振り下ろして接種しない
⑤緊急の場合には、衣服の上からでも注射できる

4 誤っている
解説3参照

5 正しい
解説3参照

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