平成31年度 第104回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 226,227

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問 226  正答率 : 75.2%
問 227  正答率 : 63.7%

 国家試験問題

国家試験問題
58歳男性。健康診断の結果が、体重72 kg、血清クレアチニン値1.0 mg/dL、BUN 20 mg/dL、空腹時血糖値122 mg/dL、HbAlc(NGSP値)6.5%、BMI 25.6であったため、かかりつけ医を受診した。かかりつけ医での検査の結果、耐糖能異常と診断され、食事療法と運動療法を開始した。仕事上、夜勤があり、食生活が不規則で十分な改善効果が得られなかったため、以下の薬剤を処方され薬局を訪れた。患者は、この薬剤の服用は初めてで、服用方法や副作用について不安を抱いている様子であった。

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問226(実務)
薬剤師がこの患者に行う服薬指導として適切なのはどれか。2つ選べ。

1 おならが増えたり、下痢をしたりすることがありますが、症状が軽度の場合は心配せず続けて服用してください。


2 この薬で腎臓の働きが悪くなることがありますので、尿量が減少した場合はお知らせください。


3 この薬で低血糖症状が起きた時は、砂糖では改善効果が低いのでブドウ糖を摂取してください。


4 この薬を食直前に飲めなかった場合は、食間でも同様の効果がありますので、食後2時間を目安に飲んでください。


5 この薬は舌の下で溶かして口の中で吸収させる薬なので、水で飲み込まないでください。




問227(衛生)
前問の服薬指導の根拠となる糖質の消化・吸収に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 マルトースは、グルコースよりも小腸からの吸収効率が高い。


2 マルターゼは、α−グルコシダーゼである。


3 スクロースは、グルコースとフルクトースがα1→4結合したものである。


4 二糖類が消化されずに小腸管腔内に滞留すると、浸透圧性の下痢を起こしやすくなる。


5 ボグリボースは、ラクトースの分解を阻害する。

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問 226    
問 227    

 e-REC解説

問226 解答 1、3

1 正
ボグリボースは副作用として、腹部膨満、放屁増加、下痢等が現れることがあり、軽度であれば問題はない。しかし、重度の場合、腸内ガスの増加により腸閉塞が現れることがあるため、その場合は服用を中止し、医師あるいは薬剤師に相談するよう説明する。

2 誤
ボグリボースは、腎機能障害等の副作用の報告は少ない。重大な副作用である低血糖や腸閉塞、肝機能障害などを患者に説明する。

3 正
ボグリボースは、α−グルコシダーゼ阻害薬である。
ボグリボースを服用している患者が砂糖(二糖類であるスクロース)を摂取した場合、砂糖の分解が抑制されるため、低血糖症状の改善は期待できない。ゆえに、低血糖症状の改善には砂糖ではなく、ブドウ糖(グルコース)を摂取するよう説明する。

4 誤
ボグリボースはα−グルコシダーゼを阻害し、二糖類から単糖類への分解を阻害することで、腸管からのグルコースの吸収を遅らせる。そのため、食間や食後に服用した場合、薬効が得られにくい。したがって、ボグリボースの服用は、二糖類が分解される前の食直前に服用する。ただし、食直前に飲み忘れたときは、食事中にただちに服用し、食後に気づいたときはその回は効果が得られにくいため、服用せず次の食事の直前に1回分服用するように説明する。

5 誤
本剤は、口腔内で崩壊するが、口腔粘膜からの吸収される製剤ではないため、唾液または水で服用するよう説明する。


問227 解答 2、4

処方薬のボグリボースは、α−グルゴシダーゼ阻害薬であり、二糖類から単糖類への分解を抑制し、腸管からの単糖の吸収を遅らせることで食後過血糖を改善する。

1 誤
マルトースは二糖類であり、小腸で2分子のグルコースに分解されたのち吸収される。一方、グルコースは単糖類であり、分解を受けることなく小腸から吸収される。そのため、マルトースはグルコースよりも小腸からの吸収効率は低い。

2 正
マルターゼは、小腸粘膜においてマルトースを分解する消化酵素である。マルトースは2分子のグルコースがα−グリコシド結合(α1→4結合)で連結しているため、マルターゼはα−グルコシダーゼの一種である。

3 誤
スクロースは、グルコースとフルクトースがα1→β2結合した二糖類である。

4 正
小腸管腔内に存在する未消化の二糖類は管腔内に移行すると、二糖類の濃度の上昇にに伴って、腸管側の浸透圧が上昇する。そのため、腸管壁から腸管側に水が引き寄せられ、下痢が起こりやすくなる。

5 誤
ラクトースは、ガラクトースとグルコースがβ−ガラクトシド結合(β1→4結合)して生成する二糖類である。よって、ラクトースはβ−ガラクトシダーゼによりガラクトースとグルコースに分解される。ボグリボースは、α−グルコシダーゼ阻害作用を有するが、β−ガラクトシダーゼ阻害作用を有さないため、ラクトースの分解を阻害できない。なお、ミグリトールはα−グルコシダーゼ阻害作用とβ−ガラクトシダーゼ阻害作用を共に有するため、ラクトースの分解を阻害することができる。

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