平成30年度 第103回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 262,263,264,265

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問 262  正答率 : 79.4%
問 263  正答率 : 84.4%
問 264  正答率 : 79.6%
問 265  正答率 : 76.1%

 国家試験問題

国家試験問題
78歳女性。関節リウマチのためメトトレキサートを服用中。病棟での薬剤管理指導の面談で、最近疲れやすく、口内炎がひどいとの訴えがあった。

検査データ:AST 90 U/L、ALT 75 U/L、MCV 105 fL、白血球数 1,300/µL、
血小板数30,000/µL

問262(実務)
医師に対して、この患者への投与を提案する薬剤として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1 ホリナートカルシウム錠


2 トファシチニブクエン酸塩錠


3 デキサメタゾン錠


4 エポエチンアルファ(遺伝子組換え)注射液


5 タクロリムス水和物カプセル




問263(薬理)
前問で適切と考えられた薬物の作用機序として正しいのはどれか。1つ選べ。

1 カルシニューリンを阻害し、インターロイキンなどのサイトカイン産生を抑制する。


2 細胞内に取り込まれて活性型葉酸となり、核酸合成を再開させる。


3 赤芽球前駆細胞に作用し、赤血球への分化増殖を促進する。


4 ヤヌスキナーゼ(JAK)を阻害し、免疫反応を抑制する。


5 細胞内のグルココルチコイド受容体と複合体を形成し、抗炎症作用を示す。




問264(実務)
その後、発熱、乾性咳嗽、息切れがあるとの訴えがあり、検査の結果、メトトレキサートが原因の間質性肺炎が疑われた。
医師に対して、この患者への投与を提案する薬剤として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1 ピルフェニドン錠


2 テルブタリン硫酸塩錠


3 インフリキシマブ(遺伝子組換え)点滴静注


4 デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物錠


5 プレドニゾロン錠




問265(薬理)
前問で適切と考えられた薬物の薬理機序として正しいのはどれか。1つ選べ。

1 TNF-α(腫瘍壊死因子-α)を捕捉する。


2 咳中枢に作用して咳嗽反射閾値を上昇させる。


3 気管支平滑筋のGタンパク共役型受容体を刺激する。


4 細胞質において受容体と結合し、この複合体が核内へ移行した後に転写活性を変化させる。


5 TGF-β(トランスフォーミング増殖因子-β)を捕捉する。

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問 262    
問 263    
問 264    
問 265    

 e-REC解説

問262 解答 1

本患者の「最近疲れやすく、口内炎がひどい」という訴えと、AST及びALTが高値であり、白血球数及び血小板数が低値という検査データなどから、服用中のメトトレキサートによる副作用である肝障害や骨髄抑制が疑われる。したがって、メトトレキサートの解毒薬として用いられるホリナートカルシウム錠の投与を提案するのが最も適切であると考えらえる。なお、ホリナートカルシウムは活性型葉酸(THF)の前駆体であり、投与後細胞内に取り込まれTHFに変換されることで、メトトレキサートによって低下したTHFを補充し細胞の核酸合成を再開させ、メトトレキサートの毒性を軽減させる。

1 正
前記参照

2 誤
トファシチニブは、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬であり、JAKによる免疫反応を抑制するため、関節リウマチや潰瘍性大腸炎に用いられる。

3 誤
デキサメタゾンは、合成糖質コルチコイド(グルココルチコイド)製剤であり、細胞内のグルココルチコイド受容体と複合体を形成し、抗炎症作用や免疫抑制作用を示すため、自己免疫疾患やアレルギー疾患などに幅広く用いられる。

4 誤
エポエチンアルファは、エリスロポエチン製剤であり、赤芽球前駆細胞に作用し赤血球への分化増殖を促進するため、腎性貧血に用いられる。

5 誤
タクロリムスは、カルシニューリン阻害薬であり、インターロイキンなどのサイトカイン産生を抑制し免疫抑制作用を示すため、臓器移植における拒絶反応の抑制などに用いられる。


問263 解答 2

1 誤
タクロリムスに関する記述である(前問解説参照)。

2 正
ホリナートカルシウムは活性型葉酸(THF)の前駆体であり、投与後細胞内に取り込まれTHFに変換されることで、メトトレキサートによって低下したTHFを補充し細胞の核酸合成を再開させ、メトトレキサートの毒性を軽減させる。

3 誤
エポエチンアルファに関する記述である(前問解説参照)。

4 誤
トファシチニブに関する記述である(前問解説参照)。

5 誤
デキサメタゾンに関する記述である(前問解説参照)。


問264 解答 5

薬剤性間質性肺炎の治療としては、原因薬剤の投与を中止し、副腎皮質ステロイド性薬のパルス療法を行う。そのため、副腎皮質ステロイド性薬であるプレドニゾロン錠の投与を医師に対して提案することが最も適切である。

1 誤
ピルフェニドンは、炎症性サイトカインの産生を抑制し、線維化形成に関与する増殖因子(TGF−β、b−FGF、PDGF)の産生を抑制するほか、線維芽細胞増殖抑制作用、コラーゲン産生抑制作用などを有するため、特発性肺線維症に用いられる。

2 誤
テルブタリンは、選択的アドレナリンβ2受容体刺激薬であり、気管支平滑筋のGsタンパク質共役型受容体であるβ2受容体を刺激し気管支拡張作用を示すため、気管支喘息や慢性気管支炎などに基づく呼吸困難等の諸症状の改善に用いられる。

3 誤
インフリキシマブは、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)に対するキメラ型モノクローナル抗体で、TNF-αを捕捉することでTNF−αと受容体の結合を選択的に阻害するため、関節リウマチやクローン病などに用いられる。なお、インフリキシマブは、重大な副作用として間質性肺炎を起こすおそれがあることからも、間質性肺炎が疑われる患者への投与を提案するべきではない。

4 誤
デキストロメトルファンは、非麻薬性鎮咳薬であり、延髄咳嗽中枢を抑制することで咳嗽反射閾値を上昇し鎮咳作用を示すため、感冒や急性気管支炎などに伴う咳嗽に用いられる。

5 正
プレドニゾロンは、合成糖質コルチコイド製剤であり、細胞質のグルココルチコイド受容体と結合し、複合体が核内へ移行後遺伝子の転写調節を行うことで、抗炎症作用や免疫抑制作用を示すため、間質性肺炎の治療などに用いられるほか、自己免疫疾患やアレルギー疾患などに幅広く用いられる。


問265 解答 4

1 誤
インフリキシマブに関する記述である(前問解説参照)。

2 誤
デキストロメトルファンに関する記述である(前問解説参照)。

3 誤
テルブタリンに関する記述である(前問解説参照)。

4 正
プレドニゾロンに関する記述である(前問解説参照)。

5 誤
前問中の薬物には、TNF-α(腫瘍壊死因子-α)を捕捉する薬物はないが、ピルフェニドンはTNF-αの産生を抑制する作用を有する(前問解説参照)。

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