令和04年度 第107回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 270,271

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問 270  正答率 : 48.2%
問 271  正答率 : 78.6%

 国家試験問題

国家試験問題
27歳男性。体重50 kg。父をドナーとする生体腎移植治療が予定されている。7日後の移植術を控え、術後に用いるタクロリムスの投与設計を薬剤師が依頼された。

問270(薬剤)
この患者にタクロリムスを経口投与し、24時間採血を行った際の血中濃度時間曲線下面積(AUC0→∞)は120 µg・h/L、一次モーメント曲線下面積(AUMC0→∞)は1,320 µg・h2/Lであった。また、タクロリムス0.5 mgを急速静注した直後の血中濃度は10 ng/mLであった。この患者にタクロリムスを1日1回経口投与し、定常状態における平均血中濃度を10 ng/mLとしたい。適切な投与量(mg)に最も近い値はどれか。1つ選べ。
ただし、タクロリムスの吸収速度定数を1.0 h-1とし、バイオアベイラビリティを0.2とする。また、タクロリムスの体内動態は線形1−コンパートメントモデルに従うものとし、反復投与によってタクロリムスの体内動態は変化しないものとする。

1 1.0


2 1.2


3 3.0


4 5.5


5 6.0




問271(実務)
術前の投与設計によって、タクロリムスカプセルの投与を手術当日夕食後より開始した。7日後に退院予定であるが、病院担当薬剤師が行う患者への指導内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 クロレラの摂取を控える。


2 加熱調理した野菜の摂取を控える。


3 グレープフルーツの摂取を控える。


4 乾燥弱毒生風しんワクチンの接種を控える。


5 インフルエンザHAワクチンの接種を控える。

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問 270    
問 271    

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問270 解答 5

設問より、「この患者にタクロリムスを経口投与し、24時間採血を行った際の血中濃度時間曲線下面積(AUC0→∞)は120 µg・h/L、一次モーメント曲線下面積(AUMC0→∞)は1,320 µg・h2/Lであった。」とあることから、この患者の経口投与時の平均滞留時間(MRTpo)を①式で算出する。

スクリーンショット 2022-07-05 14.38.07.png

よって、経口投与時の平均滞留時間(MRTpo)は11時間である。
次に「タクロリムスの吸収速度定数を1.0 h-1」とあることから、平均吸収時間(MAT)を②式で算出する。

スクリーンショット 2022-07-05 14.39.13.png

①、②式で算出した値より、静注時の平均滞留時間(MRTiv)を③式で算出する。

スクリーンショット 2022-07-05 14.40.00.png

静注時の平均滞留時間(MRTiv)より消失速度定数(ke)を④式で算出する。

スクリーンショット 2022-07-05 14.40.46.png

次に設問より「タクロリムス0.5 mgを急速静注した直後の血中濃度は10 ng/mLであった。」とあることから、分布容積(Vd)を⑤式で算出する。

スクリーンショット 2022-07-05 14.41.19.png

また、消失速度定数(ke)と分布容積(Vd)から全身クリアランス(CLtot)を⑥式で算出する。

スクリーンショット 2022-07-05 14.42.04.png

以上より、この患者にタクロリムスを1日1回経口投与し、定常状態における平均血中濃度を10 ng/mLとしたい場合の適切な投与量(mg)を⑦式で算出する。

スクリーンショット 2022-07-11 12.30.33.png

従って、この患者にタクロリムスを1日1回経口投与し、定常状態における平均血中濃度を10 ng/mLとしたい場合の適切な投与量(mg)は6.0 mgである。


問271 解答 3、4

タクロリムスは、CYP3A4で代謝されるため、CYP3A4阻害作用を有するグレープフルーツとの併用により、タクロリムスの血中濃度が上昇する。
また、免疫抑制薬であるタクロリムス投与下に乾燥弱毒生風しんワクチンのような生ワクチンを接種すると免疫抑制作用により、発症の可能性が増加するため、併用禁忌になっている。

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