平成28年度 第101回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 280,281

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問 280  正答率 : 58.3%
問 281  正答率 : 79.4%

 国家試験問題

国家試験問題
初期臨床研修医に対し、緩和ケアチームのメンバーである薬剤師が、フェンタニル製剤の特徴について講義をしている。

問280(実務)
フェンタニル及びフェンタニル製剤に関する説明として正しいのはどれか。2つ選べ。

1 フェンタニルは、腎機能が悪い患者には禁忌である。


2 フェンタニルは、がん性疼痛治療の他、全身麻酔にも用いられる。


3 フェンタニル貼付剤は、オピオイド導入に適する。


4 フェンタニル貼付剤をハサミ等で切って使用することは避ける。




問281(薬剤)
フェンタニル貼付剤に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 貼付部位の温度が上昇するとフェンタニルの吸収量が増大することがある。
2 吸収されたフェンタニルは、肝初回通過効果を受ける。
3 副作用発現時には貼付剤をはがすことで投与を中断できる。
4 急性の疼痛発作時にも有効である。

5 鎮痛効果は貼付部位周辺に限定される。

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問 280    
問 281    

 e-REC解説

問280 解答 2、4

1 誤
フェンタニルは、腎機能が悪い患者には禁忌とされていない。なお、フェンタニルを腎機能が悪い患者に投与すると、代謝・排泄が遅延し、副作用があらわれやすくなるおそれがあるため、腎機能が悪い患者に投与する際は慎重投与となっている。

2 正
フェンタニルは、各種がんにおける鎮痛や慢性疼痛における鎮痛、術後疼痛に対する鎮痛、突出痛における鎮痛、全身麻酔、全身麻酔における鎮痛、局所麻酔における鎮痛の補助で用いられている。

3 誤
フェンタニル貼付剤は、他のオピオイド鎮痛剤が一定期間投与され、忍容性が確認された患者で、かつオピオイド鎮痛剤の継続的な投与を必要とするがん性疼痛及び慢性疼痛の管理にのみ使用することとされている。そのため、フェンタニル貼付剤はオピオイド導入には適さない。

4 正
フェンタニル貼付剤の添付文書には「本剤をハサミ等で切って使用しないこと」と記載されている。フェンタニル貼付剤は、フェンタニルの放出を制御している徐放性製剤に該当し、ハサミで切ることで徐放性が失われてしまう。そのため、フェンタニル貼付剤をハサミ等で切って使用することは避けるように説明することは適切である。


問281 解答 1、3

1 正
フェンタニル貼付剤を適用している部位の温度が上昇するとフェンタニルの吸収量が増大することがある。そのため、フェンタニル貼付剤使用中は、電気毛布、湯たんぽ等の外部熱源への接触、熱い温度での入浴を避けるようにする必要がある。

2 誤
肝初回通過効果とは、投与された医薬品が、全身循環に移行する前に肝臓で受ける代謝のことをいう。フェンタニル貼付剤を利用して、皮膚から吸収されたフェンタニルは肝臓を通らず、直接全身循環に移行するため、肝初回通過効果を受けない。

3 正
貼付剤から徐々に主成分のフェンタニルが放出されて体内に吸収されるため、副作用発生時には貼付剤をはがすことでフェンタニルの投与を中断できる。

4 誤
フェンタニル貼付剤は薬物の放出を制御している徐放性製剤に該当する。血中濃度の上昇が緩やかであり、作用の発現は遅いため、急性の疼痛発作時には用いない。急性の疼痛発作時には、血中濃度を速やかに上昇させる必要があるので、舌下錠、バッカル錠を用いる。

5 誤
フェンタニル貼付剤ではフェンタニルが皮膚から吸収され、全身循環に移行することで全身作用を発揮する。鎮痛効果は貼付部位周囲に限定されるわけではない。

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