平成31年度 第104回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 294,295

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問 294  正答率 : 86.5%
問 295  正答率 : 89.4%

 国家試験問題

国家試験問題
50歳男性。身長168 cm、体重98 kg。10年前より2型糖尿病を指摘されていたが未治療であった。健康診断の結果、糖尿病の教育入院となった。入院時に日常生活について聴取したところ、患者は一人暮らしで間食や糖質を多く含む炭酸飲料の摂取が多かった。夕食時には大量飲酒を行うなど、食生活が乱れていた。日常あまり運動していなかった。
入院時の検査値は、血圧140/82 mmHg、HbA1c 9.3%(NGSP値)、随時血糖234 mg/dL、血清クレアチニン0.51 kg/dL、T−Bil 0.7 mg/dL、AST 60 U/L、ALT52 U/L、γ−GTP 130 U/L、尿糖(+++)、尿タンパク(-)であった。

入院後、以下の薬剤が処方された。

スクリーンショット 2019-07-16 11.52.42.png

問294 (病態・薬物治療)
本症例では日常生活が乱れていることから、運動療法を併せて指導することとなった。この患者の運動療法に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 運動時の脈拍数は100〜120拍/分以内に留めるように勧める。


2 増殖性網膜症を発症して重症化しても運動療法を継続する。


3 歩行運動を指導した場合は、消費カロリー分の食事量を増やすよう勧める。


4 肝機能障害があるため、空腹時(食前)の運動を勧める。


5 インスリン感受性を高めるため、有酸素運動を勧める。




問295(実務)
治療により、血糖コントロールが良好となったため退院し、下記の処方で治療を継続することとなった。この患者の退院時に薬剤師が行う説明として適切なのはどれか。2つ選べ。

スクリーンショット 2019-07-16 11.52.50.png

1 多尿・頻尿が見られても水分補給は控えること。


2 嘔吐や腹痛の場合は、連絡すること。


3 高所作業や自動車の運転等には注意すること。


4 処方5を注射し忘れた場合は、次回投与日に2回分を注射すること。


5 タンパク質制限をした食事を摂取すること。

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問 294    
問 295    

 e-REC解説

問294 解答 1、5

1 正
運動療法を安全に行うためには運動強度の管理が重要であり、強度が弱すぎると効果が得られず、強すぎると心臓への負担が大きくなってしまう。運動強度は開始時から一気に上げると負荷が強くなってしまうため、開始後から徐々に上げ、100〜120拍/分に留めるように勧める。

2 誤
増殖性網膜症は、持続的高血糖により眼血管の血流障害が起こることで新生血管が生じてしまう状態である。この新生血管は脆く出血のリスクが非常に高いため、運動などによる血流増加によって網膜出血を引き起こすおそれがある。そのため、増殖性網膜症を発症して重症化した場合、運動療法は避けた方がよい。

3 誤
糖尿病の治療において、歩行運動などの運動療法、および食事のカロリー分量を減らす食事療法は、共に並行して行う必要がある。

4 誤
インスリン製剤や経口血糖降下薬を使用している患者が、空腹時(食前)に運動を行うと過度の血糖降下を引き起こす恐れがある。あわせて、本患者のように肝機能障害を合併する場合では、血糖低下に対する代償反応が生じにくいため、より低血糖のリスクが高まる。そのため、空腹時(食前)の運動は避けた方がよい。

5 正
有酸素運動は肥大脂肪細胞を減らし、インスリン感受性を改善することで血糖コントロールを良好にする。そのため、糖尿病患者の運動療法では、有酸素運動を勧める。


問295 解答 2、3

1 誤
SGLT2阻害薬であるダパグリフロリジンは、近位尿細管でのグルコースの再吸収を阻害し、尿中へのグルコース排泄を促進する。そのため、尿中グルコース濃度が上昇し、浸透圧性利尿作用が働くことで、多尿・頻尿に伴う脱水状態となることがある。そのため、多尿・頻尿見られた際には、適度な水分補給を心がけるよう指導する必要がある。

2 正
ダパグリフロリジンは、尿中へグルコースを排泄することで、代償的に脂質代謝が亢進し、ケトアシドーシスを引き起こすおそれがある。また、デュラグルチドは、副作用として急性膵炎を引き起こすことがある。そのため、これらケトアシドーシスや急性膵炎の初期症状である嘔吐や腹痛があらわれた場合には、医師もしくは薬剤師に連絡するよう指導する必要がある。

3 正
ダパグリフロリジンおよびデュラグルチドは、副作用として低血糖によるふらつきなどを引き起こすおそれがあるため、高所作業や自動車の運転等には注意する必要がある。

4 誤
デュラグルチドは、一度に2回分を注射すると低血糖などの副作用の危険性が高くなるため行なってはならない。なお、デュラグルチドを注射し忘れた場合は、次回注射までの期間が3日間(72時間)未満であれば、その回は注射せず、次の定めた曜日に1回分を注射する。次回までの期間が3日間(72時間)以上であれば、気づいた時点で直ちに投与し、その後はあらかじめ定めた曜日に投与する。

5 誤
糖尿病性腎症合併例であれば、タンパク質制限をした食事を摂取するよう指導する必要があるが、本患者は尿タンパク(-)であることから、糖尿病性腎症を合併しているとは考えにくく、タンパク質制限をする必要はない。

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