平成31年度 第104回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 304,305

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問 304  正答率 : 87.5%
問 305  正答率 : 89.1%

 国家試験問題

国家試験問題
52歳男性。身長170 cm、体重65 kg。3年前、胃がんのため胃亜全摘切除手術を受け、近医で経過観察していた。今回の定期検診で肝転移が見つかり、化学療法導入目的で大学病院に紹介入院となった。全身倦怠感、動悸を自覚しており、貧血に対して処方1の薬剤が処方されていたが、入院時の血液検査の結果により、処方1に替えて処方2が開始された。

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問304(実務)
処方2について、看護師から病棟薬剤師に、投与前後の注意事項や観察項目に関する情報提供の依頼があった。回答として誤っているのはどれか。1つ選べ。

1 希釈するときは生理食塩液を用いてください。


2 配合変化が起こりやすいので、注意して点滴ルートを観察してください。


3 ゆっくり(2分以上かけて)投与してください。


4 血管外漏出がないかどうか、投与部位の疼痛や腫脹に注意してください。


5 投与後、頭痛の訴えや顔面潮紅などがないか観察してください。




問305(病態・薬物治療)
処方2を2週間実施した後に血液検査が実施され、以下の結果が得られた。

RBC 340 万/µL、Hb 10.2 g/dL、Ht 30.0%、MCV 105 fL、MCH 39 pg、血清ビタミンB12値 80 pg/mL(基準値200〜1,000 pg/mL)、血清総葉酸値 11.5 ng/mL(基準値6.0〜20 ng/mL)

本症例における貧血治療の今後の方針として適切なのはどれか。1つ選べ。

1 メコバラミン注射液の筋肉内投与


2 葉酸錠の経口投与


3 クエン酸第一鉄ナトリウム錠を増量して再開


4 プレドニゾロン錠の経口投与


5 脾臓の摘出術

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問 304    
問 305    

 e-REC解説

問304 解答 1

1 誤
本剤はコロイド性の鉄剤であるため、電解質を含有する生理食塩液で希釈すると凝析を起こし沈殿を生じる。そのため、希釈する際は、通常、用時10〜20%のブドウ糖注射液で5〜10倍にして使用する。

2 正
本剤はpH等の変化により配合変化が起こりやすいため、他の薬剤と配合する際は注意する必要がある。

3 正
本剤は、2分以上かけて徐々に静脈注射することとされている。

4 正
注射に際しては、血管外に漏出しないように注意する。血管外に漏出した場合は、漏出部位周辺に色素沈着や疼痛、知覚異常、腫脹等の局所刺激を起こすことがある。

5 正
本剤に副作用に、頭痛や顔面紅潮があるため、注意する必要がある。


問305 解答 1

本患者の所見であるMCV が105 fL(基準値80〜100 fL)、MCHが 39 pg(基準値30〜35 pg)と高値を示していること、血清ビタミンB12値が80 pg/mL(基準値200〜1,000 pg/mL)と低値であるが、血清総葉酸値が11.5 ng/mL(基準値6.0〜20 ng/mL)と基準値内を示していることから、巨赤芽球性貧血(悪性貧血)が強く疑われる。

1 正
メコバラミン(ビタミンB12製剤)はビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血に用いられる。

2 誤
血清総葉酸値は基準値以内であるため、葉酸錠の投与は不要である。

3 誤
本患者はクエン酸第一鉄ナトリウム錠から含糖酸化鉄注射剤に処方変更されている。注射用鉄剤は経口鉄剤投与が困難な場合や、不敵な場合に用いられることを考慮すると、経口鉄剤であるクエン酸第一鉄の増量は不適切である。

4 誤
プレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド製剤は、自己免疫性溶血性貧血などに用いられる。

5 誤
脾臓の摘出は自己免疫性溶血性貧血などで実施される。

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