令和06年度 第109回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 304,305

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問 304  正答率 : 67.8%
問 305  正答率 :

 国家試験問題

国家試験問題
28歳女性。入院中にクロルプロマジン100〜450 mg/日で1年以上、オランザピン10 mg/日で4週間、リスペリドン6 mg/日で8週間治療を継続してきたが、「誰かに見張られている」、「誰かに首をグルグルされる」「思考がとられる」などの精神病症状(幻覚妄想症状)が消失せず、難治性精神疾患と診断された。家族の同意を得てクロザピンが導入され、投与開始から20週間、入院での治療となった。外泊をするなど日常生活が送れる程度に症状が安定したため、以下の処方で退院となり、外来において多職種連携のもと治療継続することになった。退院時の血液検査や心電図などには異常所見が認められなかった。

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問304(病態・薬物治療)
この患者の病態と治療に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 難治性精神疾患は治療抵抗性統合失調症である。


2 中脳辺縁系におけるドパミン神経の機能が低下している。


3 糖尿病が発症した場合、速やかにクロザピンを中止する。


4 白血球数及び好中球数のモニタリングを毎回行う。


5 精神症状が悪化した場合、持効性抗精神病薬を併用する。




問305(実務)
退院後の治療経過観察において、薬剤師が留意すべき事項として正しいのはどれか。2つ選べ。

1 検査結果と処方内容の確認後の調剤は、クロザピン専任登録管理薬剤師が担当する。


2 心理教育や作業療法プログラムを立案する。


3 口渇、多飲、頻尿症状が発現した場合には直ちに受診するように指導する。


4 クロザピンに残薬が生じた場合は、速やかに自己廃棄するよう指導する。


5 体重減少をきたすことがあるので、セルフモニタリングできるよう指導する。

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問 304    
問 305    

 e-REC解説

問304 解答 1、4

1 正
本患者はこれまでにクロルプロマジン、オランザピン、リスペリドンなどの抗精神病薬で治療を継続してきたが、「誰かに見張られている」、「誰かに首をグルグルされる」「思考がとられる」などの精神病症状(幻覚妄想症状)が消失せず、クロザピンへ処方変更となったことから、本患者の難治性精神疾患は、治療抵抗性統合失調症であると考えられる。

2 誤
本患者は、幻覚妄想症状といった統合失調症の陽性症状が認められる。陽性症状は、中脳辺縁系におけるドパミン作動性神経の機能亢進が関与していると考えられている。

3 誤
クロザピン(商品名:クロザリル)はMARTA(多元受容体作用抗精神病薬)であり、副作用として高血糖を起こすリスクがあるが、本剤が治療抵抗性統合失調症に唯一有効な薬剤であることなどから糖尿病に禁忌とはされておらず、クロザピン(クロザリル)専任登録管理薬剤師による厳格な管理のもと、慎重に投与することとされている。なお、その他オランザピンやクエチアピンなどのMARTAは、糖尿病ケトアシドーシスによる死亡例が発生し、緊急安全性情報が発出されているため、糖尿病への投与は禁忌とされている。

4 正
クロザピンは、重篤な副作用として無顆粒球症を起こすリスクが高いため、白血球数及び好中球数のモニタリングを2週間ごとに毎回行う必要がある。

5 誤
クロザピンは、他の抗精神病薬との併用で副作用発現の危険性が増大するため、原則単剤で使用することとされている。なお、クロザピンの効果が十分に得られない場合の併用療法としては、電撃けいれん療法が推奨されている。


問305 解答 1、3、5(いずれか2つで正解)

1 正
クロザピンは作用が強力な抗精神病薬であるが、無顆粒球症などの致死的副作用のリスクが高いため、クロザピン(クロザリル)専任登録管理薬剤師による厳格な管理下でのみ投与可能である。クロザリル専任登録管理薬剤師とは、各医療機関におけるクロザリル適正使用委員会で承認されたのち、クロザリル患者モニタリングサービス(CPMS:Clozaril Patient Monitoring Service)に登録された薬剤師であり、血液検査結果や処方内容などに問題がないことを確認した上で本剤の調剤・投与を行う。

2 誤
作業療法プログラムの立案は作業療法士の業務であるため、薬剤師が留意すべき事項ではない。

3 正
クロザピンは副作用として高血糖を起こすことがあるため、口渇、多飲、頻尿、体重減少などの高血糖症状が発現した場合には、直ちに医療機関を受診するよう指導する必要がある。

4 誤
クロザピンに残薬が生じた場合は、勝手に破棄や譲渡をさせず、クロザリル専任登録管理薬剤師が回収する必要がある。

5 正
解説3参照。体重減少のセルフモニタリングは、クロザピンの副作用である高血糖の早期発見につながるため、薬剤師の指導内容として適切である。

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