令和03年度 第106回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 310,311

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問 310  正答率 : 53.4%
問 311  正答率 : 62.6%

 国家試験問題

国家試験問題
81歳男性。以前、ダラツムマブ(遺伝子組換え)の治験に参加していた。この医薬品の製造販売が承認され、薬価収載されるまでの期間に限り、無償提供プログラムがあることを知り、参加することになった。なお、この医薬品の治験では症例数が限られていたことから、製造販売業者が作成した医薬品リスク管理計画(RMP)には、全例を対象にした特定使用成績調査の実施と安全性検討事項としてInfusion reaction、骨髄抑制、感染症が設定されていた。

問310(実務)
本剤投与によって起こりうる副作用を軽減するための処置として適切なのはどれか。2つ選べ。

1 Infusion reaction を軽減させるために、本剤投与前に副腎皮質ホルモンを投与する。


2 遅延性のInfusion reaction を軽減させるために、本剤投与後に抗ヒスタミン薬を投与する。


3 骨髄抑制のためにABO式血液型の検査を定期的に行う。


4 慢性閉塞性肺疾患もしくは気管支ぜん息のある患者には、投与後処置として気管支拡張薬及び吸入ステロイド薬の投与を検討する。


5 A型肝炎ウイルスの再活性化を防ぐために肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行う。




問311(法規・制度・倫理)
我が国の医療保険制度では、保険で認められている診療に加えて、薬価基準に収載されていない医薬品を使用すると、いわゆる混合診療となり、すべての医療が保険対象外となるのが原則である。しかし、この無償提供プログラムに参加した患者の場合、ダラツムマブの薬剤料以外の医療費については保険外併用療養費制度によって保険給付の対象になる。この無償提供プログラムは、次のどれに該当するか。1つ選べ。

1 評価療養


2 患者申出療養


3 選定療養


4 未承認薬療養


5 適応外療養

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問 310    
問 311    

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問310 解答 1、4

ダラツムマブの医薬品リスク管理計画(RMP)には、Infusion reaction(アナフィラキシー、鼻閉、悪寒、気管支痙攣、低酸素症、呼吸困難等)、骨髄抑制、感染症が安全性検討事項として設定されている。

1 正
ダラツムマブによるInfusion reactionは、初回投与時に多く認められており、その予防及び軽減のため、本剤投与開始1〜3時間前に副腎皮質ホルモン、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤を投与する。

2 誤
遅発性(本剤投与開始から24時間以降に発現)Infusion reactionを軽減させるため、必要に応じて本剤投与翌日に副腎皮質ホルモンの経口投与を行う。

3 誤
骨髄抑制による感染症対策として、本剤の投与前及び投与中は、定期的に血液検査等を行い、患者の状態を十分に観察する。ABO式血液型検査は、緊急の輸血が必要になった場合に備えて、輸血実施前に行うものであり、定期的に行う必要はない。

4 正
本剤は、Infusion reactionによる気管支けいれんを起こすことがあり、慢性閉塞性肺疾患もしくは気管支ぜん息のある患者又はそれらの既往歴のある患者の場合、気管支けいれんの発現リスクが高くなるおそれがある。そのため、これらの患者には、本剤の投与後処置として気管支拡張薬及び吸入ステロイド薬の投与を検討することとされている。

5 誤
本剤投与により再活性化が報告されているのはB型肝炎ウイルスである。そのため、本剤投与に先立って肝炎ウイルス感染の有無を確認し、適切な処置を行うとともに、投与後は肝炎ウイルスマーカーや肝機能の定期的検査を行う。


問311 解答 1

保険外併用療養費制度とは、選定療養、評価療養または患者申出療養を含む療養について、その要する費用のうち、選定療養、評価療養または患者申出療養に該当する部分は医療保険の適用外とし、それ以外の基礎的な部分(一般保険診療とその共通する部分)について保険給付を行うものである。
本患者が参加した治験薬の無償提供プログラムは、評価療養に該当するため、治験薬にかかる費用以外の費用については保険給付の対象となる。

(保険外併用療養費制度の対象となる療養)
・選定療養…特別の療養環境の提供(特別室:差額ベッド)
      前歯部の材料差額
      200床以上の病院の初診、再診
      予約診療
      時間外診療 等

・評価療養…先進医療
      医薬品の治験に係る診療
      承認後、薬価基準収載前の医薬品に係る診療
      薬価基準に収載されている医薬品の適応外投与 等

・患者申出療養…先進医療において、実施できる患者の基準から外れてしまった時
        先進医療において、自分の身近な医療機関で行われていない時 等

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