平成29年度 第102回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 316,317

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問 316  正答率 : 54.3%
問 317  正答率 :

 国家試験問題

国家試験問題
漬物製造工場の野菜洗浄室で清掃中、作業員が誤って塩酸タンクを倒し、隣接した次亜塩素酸ナトリウム溶液タンクのバルブを破損した。その際、漏出した塩酸と次亜塩素酸ナトリウムが反応してガスが発生し、吸引した作業者は、激しい目の痛みと呼吸困難を訴えた。その直後、作業員は近隣の総合病院に救急搬送された。

問316(実務)
救急搬送された患者に対し、病院で行う処置として適切でないのはどれか。2つ選べ。

1 水で目及び粘膜を洗浄する。


2 EDTA(エデト酸カルシウム二ナトリウム)を投与する。


3 酸素吸入する。


4 輸液を投与する。


5 チオ硫酸ナトリウムを投与する。




問317(法規・制度・倫理)
この漬物製造工場は、近くの薬局から劇物である塩酸と次亜塩素酸ナトリウムを購入していた。薬局及び漬物製造工場におけるこれらの劇物の取扱いに関する記述として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1 薬局で販売するためには、毒物又は劇物の販売業(毒物劇物販売業)の登録を受けなければならない。


2 薬局で販売する場合、漬物製造工場の購入者の氏名及び住所を確認した後でなければ交付してはならない。


3 漬物製造工場の責任者は、薬局から購入した劇物の名称と数量を帳簿に記載しなければならない。


4 漬物製造工場では、貯蔵する場所に「医薬用外」及び「劇物」の文字を表示しなければならない。


5 漬物製造工場で廃棄する場合は、中和等により劇物に該当しないものにしなければならない。

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問 316    
問 317    

 e-REC解説

問316 解答 2、5

塩素ガス曝露による中毒症状には眼、鼻、咽頭又は喉頭の痛み、呼吸困難、ぜん鳴、上気道閉塞などがあり、大量に体内に入ると、死に至る危険性もある。塩素ガス曝露者には特異的な解毒剤がないため、塩素ガス曝露者が病院に救急搬送された場合には次のような処置を行う。
① 眼に入った塩素を除去するために15分以上流水で眼及び粘膜を洗浄する(選択肢1)
② 呼吸を補助するために気道確保、酸素吸入、人工呼吸などを行う(選択肢3)
③ 低酸素血症に伴う循環不全に対して循環血液量増大のために輸液を投与する(選択肢4)
なお、EDTAの投与は鉛中毒の解毒に用いられる処置(選択肢2)であり、チオ硫酸ナトリウムの投与はシアン及びシアン化合物による中毒時などに用いられる処置(選択肢5)である。


問317  解なし

1 適切
薬局開設許可により、医薬品の調剤と販売を行うことはできるが、毒物又は劇物を販売することはできない。そのため、薬局で毒物又は劇物を業として販売するには、都道府県知事(保健所設置市市長又は特別区区長)から毒物劇物販売業の登録を受けなければならない。

2 適切、不適切を判断しにくい
毒物劇物営業者以外の者(譲受人)へ劇物を販売する際に購入者の氏名及び住所を運転免許証などで確認して交付することが義務づけられているのは、引火性等を有する毒物又は劇物(ナトリウム、ピクリン酸など)である。
なお、毒物劇物営業者以外の者に販売・授与する際には、購入者の氏名及び住所の確認とは別に譲受人からの書面の提出を受ける必要がある。
したがって、本問は不適切であると考えられるが、提出された書面に購入者の氏名及び住所が記載されていることを確認してから販売することを考えると不適切と言い切ることもできないため、「適切」、「不適切」を判断しにくい問題であるといえる。

3 不適切
毒物劇物営業者以外の者(譲受人)が劇物を購入しようとする際、譲受人は当該劇物の名称、数量等を記載し押印のある書面を、毒物劇物営業者(譲渡人)に提出しなければならないが、帳簿への記載義務はない。

4 適切、不適切を判断しにくい
業務上取扱者(業務上毒物又は劇物を取り扱う者)であれば、盗難防止のための措置や貯蔵・陳列場所への表示、事故の際の措置等の規定を遵守する必要がある。
したがって、本問は適切であると考えられるが、本問の漬物製造工場での「劇物である塩酸」の使用が業務上の取扱いであるかの判断が設問の背景からは不明瞭であるため、適切と言い切ることができず、「適切」、「不適切」を判断しにくい問題であるといえる。

5 適切、不適切を判断しにくい
劇物である塩酸を廃棄する場合は希釈・中和等の政令で定める技術上の基準に従って水で10倍に希釈して測定したときのpHを2以上にしなければならない。
塩酸を希釈・中和してpH2以上のものにしたときは、水で10倍に希釈しているため塩酸中の塩化水素は10%以下になっており、劇物としての規制を受けない。したがって、塩酸等を廃棄する際には、少なくとも劇物に該当しない状態にする必要がある。
以上のことから、本問は適切であると考えられるが、塩酸を塩化水素10%以下に希釈し劇物に該当しないものにしただけでは、pH2以上になると言い切ることはできず、そのまま廃棄できるとも言い切れないため、「適切」、「不適切」を判断しにくい問題であるといえる。
なお、次亜塩素酸ナトリウムは毒物又は劇物ではないため、その廃棄について毒物及び劇物取締法の規制を受けない。

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