令和05年度 第108回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 97,98

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問 97  正答率 : 64.5%
問 98  正答率 : 55.5%

 国家試験問題

国家試験問題
問97〜98
ある化合物が医薬品として適合するかどうかの判定は、分離分析、定性分析及び定量分析を駆使して行われる。次の記述は、日本薬局方L−アラニン(C3H7NO2:89.09)の純度試験(一部要約)及び定量法である。

純度試験
試料溶液及び標準溶液20 µLずつを正確にとり、次の条件で液体クロマトグラフィーにより試験を行う。試料溶液及び標準溶液から得たピーク高さから試料溶液1 mLに含まれるアラニン以外のアミノ酸の質量を求め、その質量百分率を算出するとき、アラニン以外の各アミノ酸の量は0.1%以下である。

試験条件
検出器:可視吸光光度計(測定波長:570 nm)
カラム:内径4.6 mm、長さ8 cmのステンレス管に3 µmのポリスチレンにスルホン酸基を結合した液体クロマトグラフィー用強酸性イオン交換樹脂(Na型)を充填する。
〜(中略)〜
移動相:移動相AからEの順に切り換える。
反応試薬:ニンヒドリンを含む溶液
〜(以下略)〜

定量法
本品を乾燥し、その約90 mgを精密に量り、ギ酸3 mLに溶かし、酢酸(100)50 mLを加え、0.1 mol/L過塩素酸で滴定する(電位差滴定法)。同様の方法で空試験を行い、補正する。

0.1 mol/L過塩素酸1 mL=   ア   mg C3H7NO2


問97
純度試験に用いた液体クロマトグラフィー(LC)に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 一般に、この検出器の光源にはタングステンランプが用いられる。


2 固定相は陰イオン交換体である。


3 移動相はAからEの順に、pHが大きくなる。


4 このLCは、プレカラム誘導体化法である。


5 アラニンとプロリンは同じ呈色物質を生成する。




問98
定量法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 試料95.67 mgを量り取った場合、「約90 mg」を量り取ったことにならない。


2 L−アラニンはアセチル化された後、過塩素酸と反応する。


3 この電位差滴定法では、指示電極にガラス電極を用いる。


4 本試験より空試験の方が、0.1 mol/L過塩素酸の滴加量は少ない。


5   ア   に入る数値は4.455である。

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問 97    
問 98    

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問97 解答 1、3

1 正
本試験の検出器は、設問中の検出器項目に「可視吸光光度計(測定波長:570 nm)」とあるため、光源にタングステンランプやハロゲンタングステンランプが用いられる。

2 誤
本試験の固定相は、設問中のカラム項目に、「ポリスチレンにスルホン酸基を結合した液体クロマトグラフィー用強酸性イオン交換樹脂(Na型)」とあるため、陽イオン交換体である。

3 正
陽イオン交換クロマトグラフィーによるアミノ酸分離では、移動相のpHを徐々に大きくすることにより、等電点の低いアミノ酸から順に溶出させることができる。したがって、本試験の移動相は、AからEの順に、pHが大きくなる。

4 誤
プレカラム誘導体化法は、試料をカラムに導入する前に反応試薬(ダンシルクロリドなど)と反応させる方法である。また、ポストカラム誘導体化法は、試料がカラムから分離した後、反応試薬(ニンヒドリンなど)と反応させる方法である。本試験のLCは、設問中の反応試薬項目に「ニンヒドリンを含む溶液」とあるため、ポストカラム誘導体化法である。

5 誤
アラニンなどのアミノ酸はニンヒドリン試薬と反応して紫色の呈色物質を生成し、プロリンなどのイミノ酸はニンヒドリン試薬と反応し黄色の呈色物質を生成するため、アラニンとプロリンは異なる呈色物質を生成する。


問98 解答 3、4

1 誤
日本薬局方において、試料の採取量に「約」を付けたものは、記載された量の±10%の範囲を意味する。したがって、試料を約90 mg量るとは、81 mg〜99 mgの範囲内で秤量することであるため、試料95.67 mgを量り取った場合、「約90 mg」を量り取ったことになる。

2 誤
非水滴定において溶媒に無水酢酸が用いられている場合、試料中の第一級アミン及び第二級アミンがアセチル化される。しかし、本定量法は溶媒に無水酢酸が用いられていないため、L−アラニンはアセチル化されることなく、過塩素酸と反応する。

3 正
非水滴定や中和滴定における電位差滴定法では、指示電極にガラス電極を用いる。

4 正
本定量法は、L−アラニンを過塩素酸で滴定しているため、直接滴定である。直接滴定では、本試験より空試験の方が、0.1 mol/L過塩素酸の滴加量は少ない。

5 誤
過塩素酸は、L−アラニンの塩基性官能基(−NH2)と1:1のmol比で反応する。0.1 mol/L過塩素酸1 mLは0.1 mmolの過塩素酸を含むため、L−アラニン0.1 mmolと反応する。
設問文より、L−アラニン(C3H7NO2)の分子量が89.09であることから、0.1 mol/L過塩素酸1 mL と反応するL−アラニンの量は下記のように計算される。

0.1 mol/L過塩素酸1 mL =   0.1 mmol × 89.09 g/mol   C3H7NO2
= 8.909 mg C3H7NO2

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