令和07年度 第110回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 97,98

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問 97  正答率 : 44.2%
問 98  正答率 : 47.3%

 国家試験問題

国家試験問題
次の記述は、X線造影剤として用いられる日本薬局方アミドトリゾ酸(C11H9I3N2O4:613.91)の純度試験と定量法に関するものである。

スクリーンショット 2025-05-28 13.06.05.png


純度試験
芳香族第一アミン 本品0.20 gをとり、水5 mL及び水酸化ナトリウム試液1 mLを加えて溶かし、亜硝酸ナトリウム溶液(1→100)4 mL及び1 mol/L塩酸試液10 mLを加えて振り混ぜ、2分間放置する。次にアミド硫酸アンモニウム試液5 mLを加えてよく振り混ぜ、1分間放置した後、1−ナフトールのエタノール(95)溶液(1→10)0.4 mL、水酸化ナトリウム試液15 mL及び水を加えて正確に50 mLとする。この液につき、同様に操作して得た空試験液を対照とし、紫外可視吸光度測定法により試験を行うとき、波長485 nmにおける吸光度は0.15以下である。

定量法
本品約0.5 gを精密に量り、けん化フラスコに入れ、水酸化ナトリウム試液40 mLに溶かし、亜鉛粉末1 gを加え、還流冷却器を付けて30分間煮沸し、冷後、ろ過する。フラスコ及びろ紙を水50 mLで洗い、洗液は先のろ液に合わせる。この液に酢酸(100)5 mLを加え、0.1 mol/L硝酸銀液で滴定する(指示薬:テトラブロモフェノールフタレインエチルエステル試液1 mL)。ただし、滴定の終点は沈殿の黄色が   ウ   に変わるときとする。

0.1 mol/L硝酸銀液1 mL =   エ   mg C11H9I3N2O4


問97
純度試験の操作を行って得られる芳香族第一アミンの許容限度に最も近いのはどれか。1つ選べ。
ただし、芳香族第一アミンの本操作による呈色物の比吸光度スクリーンショット 2025-05-28 13.09.29.png(485 nm)は475、層長は1 cmとする。

1 0.040%


2 0.079%


3 0.16%


4 0.79%


5 1.58%




問98
定量法に関する記述として正しいのはどれか。2つ選べ。

1 本定量法の原理は、Volhard法に基づいている。


2 下線部アの標準液は、0.1 mol/Lチオシアン酸アンモニウム液の標定に用いられる。


3 下線部イの指示薬の代わりにフルオレセインナトリウムを用いることができる。


4   ウ   に入る色は、橙色である。


5   エ   に入る数字は、20.46である。

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問 97    
問 98    

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問97 解答 2

本問では、紫外可視吸光度測定法を用いた純度試験を行っている。純度試験とは、医薬品中の混在物の純度を規定するための試験である。通例、その混在物の種類や量を規定する。
紫外可視吸光度測定法による試験は、Lambert-Beerの法則(①式)が用いられる。

Aスクリーンショット 2025-05-28 13.09.29.png×c(w/v%)×l(cm)…①

ここで、本品0.20 gに含まれてもよい芳香族第一アミンの許容量をx gとすると、本試験における最終的な芳香族第一アミンの濃度はx g/50 ml=2x (w/v%)となる。

設問文よりA=0.15、スクリーンショット 2025-05-28 13.09.29.png=475、l=1を、①式に代入すると、
0.15=475×2x(w/v%)×1(cm)

これを計算すると、x≒0.000158 gとなる。
よって、許容限度は以下のように求めることができる。

スクリーンショット 2025-05-28 13.12.25.png


問98 解答 2、5

日本薬局方アミドトリゾ酸の定量は、沈殿滴定によって行われる。以下に沈殿滴定についてまとめる。
スクリーンショット 2025-05-28 13.15.06.png

1 誤
本定量法の原理は、Fajans法に基づいている。Fajans法とは、フルオレセインナトリウムやテトラブロモフェノールフタレインなどの吸着指示薬を用いて、ハロゲン化物イオンなどを硝酸銀で滴定する方法である。なお、Volhard法とは銀イオンなどをチオシアン酸アンモニウム液で滴定する方法である。

2 正
標定とは、容量分析用標準液について、規定された濃度(mol/L)からのずれを表すファクター fを決定する操作である。日本薬局方容量分析用標準液0.1 mol/L硝酸銀液は、0.1 mol/Lチオシアン酸アンモニウム液の標定に用いられる。

3 誤
本定量法では、テトラブロモフェノールフタレインエチルエステル試液の代わりに、フルオレセインナトリウムを用いることはできない。フルオレセインナトリウムは遊離型(陰イオン)が塩化銀の表面に吸着してフルオレセインの銀塩となり変色する。つまり、溶液中でフルオレセインナトリウムが遊離型(陰イオン)になる必要がある。本定量法では、酢酸酸性条件下で滴定を行うため、フルオレセインナトリウムが遊離型(陰イオン)になりにくくなるため終点が不明瞭となり用いることはできない。

4 誤
  ウ   に入る色は、緑色である。

5 正
アミドトリゾ酸と硝酸銀は1:3で反応する。
設問中の0.1 mol/L硝酸銀液1 mLに含まれる硝酸銀は0.1 mmol(0.1 mol/L×1 mL)であり、これに対して反応するアミドトリゾ酸の物質量(mol)は、0.1/3 mmolとなる。よって、アミドトリゾ酸の反応量(mg)は下記のように求めることができる。
0.1/3 mmol×(アミドトリゾ酸の分子量)=0.1/3 mmol×613.91 g/mol≒20.46 mg
従って、  エ  に入れるべき数値は、20.46である。

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