平成26年度 第99回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 302,303

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問 302  正答率 : 60.1%
問 303  正答率 : 57.2%

 国家試験問題

国家試験問題
48歳女性。身長160 cm、体重65 kg。営業職。1年ほど前から胸焼けやゲップなどがあり市販の胃腸薬で対応していた。最近、その症状が改善されず、また、突然、咳込んだりすることがあったため、消化器内科を受診したところ、逆流性食道炎と診断され、以下の処方が開始された。
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問302(病態・薬物治療)
この患者の治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 オメプラゾールの主たる代謝酵素はCYP2C9であるため、ワルファリンとの併用は注意すべきである。
2 オメプラゾールの代謝に関して、日本人を含むモンゴル系人種で2%程度のPM(poor metabolizer)が存在する。
3 オメプラゾールの代謝に関して、EM(extensive metabolizer)の患者では、PM患者より、症状の改善が期待できる。
4 患者に、噛んだり砕いたりせずに服用するように指導する。
5 オメプラゾールの投与により、胃がんによる症状が隠ぺいされることがあるので、悪性でないことを確認して治療することが重要である。


問303(実務)
オメプラゾール錠を4週間服用した結果、胸焼けなどの症状は明らかに改善したが、以前からの咳は継続していた。そこで、文献検索により、逆流症状を有する患者の慢性の咳に対するプロトンポンプ阻害薬の効果に関する論文を入手した。その論文の中に以下の図が掲載されていた。この図に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 メタアナリシスの結果を示す際によく用いられ、ファンネルプロットとよばれる。
2 検討に用いられた3つの研究結果が不均一とはいえないことが確認できる。
3 横の線は、標準誤差を表す。
4 最下段のひし形は、3つの研究結果を統合したものである。
5 逆流症状を有する患者の慢性の咳に対して、プロトンポンプ阻害薬は、プラセボよりも有意に効果があると、読み取れる。
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問 302    
問 303    

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問302 解答 4、5

1 誤
オメプラゾールの主たる代謝酵素はCYP2C19であり、一方、ワルファリンの主たる代謝酵素はCYP2C9である。ただし、オメプラゾールとワルファリンの主たる代謝酵素は異なるが、オメプラゾールがワルファリンの代謝酵素を阻害するため、ワルファリンとオメプラゾールを併用すると、ワルファリンの血中濃度が上昇し、抗凝血作用が増強するおそれがあるため注意は必要である。

2 誤
オメプラゾールの主たる代謝酵素はCYP2C19である。CYP2C19には遺伝子多型が存在し、遺伝学的にCYP2C19の機能を欠損する個体(PM:poor metabolizer)は、日本人を含むモンゴル系人種で13〜20%存在する。

3 誤
EM(extensive metabolizer)の患者では、PM患者より、オメプラゾールが早く代謝され血中から消失する。そのため、EMの患者では、PM患者より、症状の改善がみられにくい。

4 正
オメプラゾール錠は一般に腸溶性錠であるため、患者に、噛んだり砕いたりせずに服用するように指導する。

5 正
オメプラゾールの服用により、胃がんの症状である胃部不快感、吐き気、胸やけなどが抑えられ、隠蔽されることがある。そのため、オメプラゾールを投与する際には、内視鏡などで悪性でないことを確認する必要がある。


問303 解答 2、4

問題に添付されている図は、メタアナリシスの結果を示す際によく用いられ、フォレストプロットと呼ばれる。フォレストプロットでは、個々の研究結果を上から1行ずつ並べ、最下段にこれらを統合した結果を示し、個々の研究結果の平均値を四角(■)、95%信頼区間を横線(―)で表している。また、個々の研究を統合した結果は菱形(◆)で表され、菱形の中心が代表値(点推定値)であり、菱形の大きさ(横幅)が95%信頼区間を示す。
■及び◆の中心が示す横軸の値(オッズ比)が1より大きい場合は薬物投与が有効ではなく、1より小さい場合は薬物投与が治療に有効であると考えられる。また、95%信頼区間(横線及び◆の横幅)がオッズ比1を挟んでいる場合、結果に有意差がないと考えられ、95%信頼区間(横線及び◆の横幅)がオッズ比1を挟んでいない場合、結果に有意差があると考えることができる。

1 誤
前記参照

2 正
図の左下にあるTest for heterogenenityにP=0.88(P>0.05なら不均一ではない)、I2=0%(異質性なし)とあることから、この研究結果は、不均一とはいえない。

3 誤
前記参照

4 正
前記参照

5 誤
問題文に添付されている図では、3つの研究においていずれの場合も、横線(―:95%信頼区間)が1を挟んでおり、また、総合結果の◆も1を挟んでいるため、逆流症状を有する患者の慢性の咳に対して、プロトンポンプ阻害薬は、プラセボよりも有意に効果があると、読み取ることはできない。

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