平成26年度 第99回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 304,305

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問 304  正答率 : 32.7%
問 305  正答率 : 65.1%

 国家試験問題

国家試験問題
60歳女性。10年ほど前に尿タンパクを指摘されていたが放置していた。その後、疲れやすくなったため、8年ほど前に近医を受診した。腎機能低下を指摘され、薬物療法が開始された。症状は徐々に進行し、現在は慢性腎不全の保存期である(検査値:血清クレアチニン値3.0 mg/dL、血清カルシウム値8.8 mg/dL、血清リン値4.4 mg/dL、血清カリウム値5.0 mEq/L)。以下の処方を受けているが、最近、胸のむかつきなどの胃炎症状を訴えている。
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この女性患者にニザチジンを投与することとなった。なお、腎機能が正常な女性において、ニザチジンの全身クリアランスに占める腎クリアランスの割合は90%、eGFRを120 mL/min/1.73 m2とし、ニザチジンの腎クリアランスはeGFRに比例し、腎外クリアランスは腎機能の影響を受けないと仮定した。また、eGFRの推定には次のノモグラムを用いた。
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問304(病態・薬物治療)
腎機能正常者におけるニザチジンの1日量300 mgとするとき、この患者に対するニザチジンの1日量として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1 30 mg
2 60 mg
3 90 mg
4 120 mg
5 150 mg


問305(実務)
この患者の薬学的管理に関する記述のうち、適切ではないのはどれか。1つ選べ。

1 テモカプリル塩酸塩錠は、血清カリウム値を上昇させることがある。
2 炭酸水素ナトリウムは、代謝性アシドーシスに対して処方される。
3 高リン血症を併発した場合には、炭酸マグネシウムの投与を考慮する。
4 クレメジンカプセル200 mgは、他剤との相互作用を避けるため服用時期を変更するよう疑義照会する。
5 消化管へのポリスチレンスルホン酸カルシウムの蓄積を避けるため、便秘を起こさせないようにする。

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問 304    
問 305    

 e-REC解説

問304 解答 2

問題文に「腎機能が正常な女性において、ニザチジンの全身クリアランスに占める腎クリアランスの割合は90%」とあることから、腎機能が正常(eGFR:120 mL/min/1.73 m2)な女性のニザチジンの消失過程を以下のように考えることができる。
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本患者に対する1日投与量を計算するにあたり、eGFRを用いて腎機能を確認する必要がある。その際、問題中のノモグラフを用いて、eGFRの推定する(左に年齢(60歳)、右に血清Cr(3.0 mg/dL)をプロットし直線でつなぎeGFR(mL/min/1.73 m2)との交点を確認する)。その結果、本患者のeGFRは13 mL/minであると推定できる。このことから、本患者の腎機能は腎機能正常者120 mL/minの約10%まで低下しており、本患者のニザチジンの消失過程を以下のように考えることができる。
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上記より、本患者のニザチジンの全身クリアランスは腎機能正常患者の約20%まで低下していると考えることができる。このことから、投与量を腎機能正常患者の20%にする必要があるため、この患者に対するニザチジンの1日量は、300 mg×0.2=60 mgとすべきである。


問305 解答 3

1 適切
テモカプリル塩酸塩錠は、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬であり、アンギオテンシンⅡの生成を抑制してアルドステロン分泌を低下させる。テモカプリル塩酸塩錠の服用により、アルドステロンによるKの排泄が抑制されるため、副作用として高カリウム血症を起こすことがある。

2 適切
慢性腎不全では、腎でのHの排泄の低下により代謝性アシドーシスを起こすことがある。炭酸水素ナトリウムは吸収性の制酸剤であるため、代謝性アシドーシスの是正に用いられる。

3 不適切
慢性腎不全患者が高リン血症を併発した場合には、沈降炭酸カルシウムやセベラマー塩酸塩などが用いられる。

4 適切
クレメジンカプセルは球形吸着炭であり、他剤と同時服用した場合、他剤を吸着して体外へ排出してしまうおそれがあるため、他剤と服用時間をずらす必要がある。

5 適切
ポリスチレンスルホン酸カルシウムは、陽イオン交換樹脂であり、腸管内のカリウムイオンを吸着し、糞便中に排泄されることで、血清カリウム値を低下させる。本剤が消化管内に蓄積することで副作用として腸管穿孔や腸閉塞を起こすことがあるので、本剤服用中は便秘をおこさせないように注意する必要がある。

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