平成29年度 第102回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 93

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問 93  正答率 : 61.5%

 国家試験問題

国家試験問題
下図の実線はある純物質の化学ポテンシャルと温度の関係を示したグラフである。次の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1 このグラフの傾きはモルあたりのエントロピーを表す。
2 温度がT2のとき、二相が共存しており、自由度は2である。
3 温度がT3のとき、液相よりも気相の化学ポテンシャルが高いため、この純物質は自発的に気相に変化する。
4 この純物質に不揮発性溶質を溶かしたとき、液相の化学ポテンシャルのグラフは図中のbの方向に移動する。
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問 93    

 e-REC解説

解答 1、4

化学ポテンシャル(µ)とは、多成分系の各成分1モル当たりのギブズエネルギーのことをいい、①式で表される。

µhTs ……①
h:各相のモルエンタルピー、s:各相のモルエントロピー

式よりµは絶対温度Tと直線関係であり、その直線の傾きはs、切片はhを示すことがわかる。

1 正
上記参照。

2 誤
自由度はその系の状態を指定するために必要な独立に決定できる示強性の状態関数(温度、圧力、組成など)の最小数を意味しており、②式で表される。

FC+2-P ……②
F:系の自由度、C:成分の数、P:系を構成する相の数

温度がT(沸点)の時、液相と気相の2相が共存している(P=2)。また、本問では純物質を用いることから成分の数は1であることがわかる(C=1)。
したがって、自由度は下記のように計算される。

FC+2-P=1+2-2=1

よって自由度は1となる。

3 誤
化学ポテンシャルは、低い方が安定であり、自発的に反応が進行する場合には化学ポテンシャルは減少する。温度がT3のとき、液相よりも気相の化学ポテンシャルが低いため、この純物質は自発的に気相に変化する。
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4 正
純物質に不揮発性溶質を溶かし水溶液とすると、束一的性質により凝固点降下、沸点上昇が起こる。これは、不揮発性溶質を溶かすことにより、溶媒の化学ポテンシャルが低下し、グラフが下図のように、bの方向に移動することにより生じる。
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