平成29年度 第102回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 200,201

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問 200  正答率 : 50.5%
問 201  正答率 : 44.7%

 国家試験問題

国家試験問題
64歳男性。COPD(慢性閉塞性肺疾患)と診断され、チオトロピウム臭化物水和物(1日5 µg)とサルメテロールキシナホ酸塩(1日100 µg)の吸入を継続的に行なっていた。日常の薬物治療のアドヒアランスは良好であった。受診から2年後、この男性は呼吸困難と38.1℃の発熱を訴え、肺からラ音が聞こえたため感染症が疑われ緊急入院となった。パルスオキシメーター(オキシメトリー)で測定したところSpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)は92%であった。喫煙歴44年であり、若い頃から1日30〜40本吸っていた。COPD発症を機会に禁煙指導を受けていたが、1日10本程度吸っていたという。
酸素吸入の他に、増悪期の薬物治療として医師は以下に示した処方薬と注射用抗菌薬を投与することとした。

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問200(実務)
感染症の疑いにより投与される注射用抗菌薬として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

1 アジスロマイシン水和物
2 リネゾリド
3 アルベカシン硫酸塩
4 ベンジルペニシリンカリウム
5 バンコマイシン塩酸塩


問201(物理・化学・生物)
酸素飽和度は以下の式で表される。

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酸素飽和度を測定するオキシメトリーでは、酸素が結合したヘモグロビン(HbO2)と結合していないヘモグロビン(Hb)の吸光係数が異なることを利用している。図はHbO2とHbの吸光係数を表したグラフである。ある血液試料の665 nmと880 nmにおける吸光度(A665、A880)を測定したところ、その比(A665/A880)が0.8となった。このとき、血液試料の酸素飽和度に最も近い値はどれか。1つ選べ。
ただし、測定においてランベルト・ベール(Lambert−Beer)の法則が成り立つものとし、吸光度にはHbとHbO2のみが寄与するものとする。

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問 200    
問 201    

 e-REC解説

問200 解答 1

本患者は、呼吸困難、咳嗽、喀痰などの症状が急激に悪化したCOPDの増悪期であり、安定期の治療内容を変更する必要がある。
COPDの増悪期の治療は抗菌薬(Antibiotics)、気管支拡張薬(Bronchodilators)、ステロイド(Corticosteroids)の使用を基本とする薬物療法(ABCアプローチ)であり、必要に応じて酸素療法、換気補助療法などを追加する。
本問の抗菌薬のうち、マクロライド系抗菌薬のアジスロマイシンは、抗菌作用の他に免疫調節作用(抗サイトカイン作用)をもつことからCOPDの増悪抑制に用いられる。


問201 解答 1

酸素飽和度は、血液中のヘモグロビンのうち、酸素と結びついているヘモグロビンの割合であり、オキシメトリーを用いて測定することができる。オキシメトリーによる酸素飽和度の測定では、酸素が結合したヘモグロビン(HbO2)と酸素が結合していないヘモグロビン(Hb)の吸光係数が異なることを利用しており、各波長における吸光度(A665、A880)は、HbO2とHbの吸光度の和で表される。本問を正答へ導くために、まずは、ランベルト・ベールの法則を用いて血液試料中のHbO2、Hbの濃度を求める必要がある。
ランベルト・ベールの法則は吸光度Aが層長lと試料濃度cに比例することを示した法則であり、以下の式①で表される。
A=kcl…………①
ただし、kは比例定数であり吸光係数と呼ばれ、層長1 cm、試料濃度1 mol/L溶液に換算した時の吸光係数をモル吸光係数εという。血液試料中におけるHbO2とHbのεはグラフより読み取ることができ、665 nmにおけるHbO2εは0.1、Hbのεは0.6、880 nmにおけるHbO2εは0.2、Hbのεは0.15となる。
上記の数値を式①に代入すると、A665とA880は以下の式②、式③で表される。
A665=0.1[HbO2]l +0.6[Hb]l =(0.1[HbO2]+0.6[Hb])l …………②
A880=0.2[HbO2]l +0.15[Hb]l =(0.2[HbO2]+0.15[Hb])l …………③
また、設問より、吸光度の比(A665/A880)が0.8とあるため、式②、式③より、HbO2、Hbの濃度は以下の式④で表される。
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0.1[HbO2]+0.6[Hb]=(0.2[HbO2]+0.15[Hb])0.8
0.1[HbO2]+0.6[Hb]=0.16[HbO2]+0.12[Hb]
0.06[HbO2]=0.48[Hb]
[HbO2]=8[Hb]
式④で求めたHbO2、Hbの濃度より、酸素飽和度は以下のようになる。
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