平成29年度 第102回 薬剤師国家試験問題
一般 実践問題 - 問 210,211

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問 210  正答率 : 66.1%
問 211  正答率 : 57.8%

 国家試験問題

国家試験問題
1歳男児。耳鼻科を受診し中耳炎と診断され、以下の薬剤が処方された。母親が処方せんを持参し、薬局を訪れた。
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問210(実務)
この薬剤についての母親への説明として適切なのはどれか。2つ選べ。

1 症状の有無にかかわらず、5日分は飲み続けてください。
2 まれに痙れんしたり、意識を失うようなことがありますので、その際は直ちに受診してください。
3 下痢が起こることがありますが、よくある副作用なので心配ありません。
4 尿が赤くなることがありますが、心配ありません。
5 甘味がつけてあり、苦みを感じることはありません。


問211(物理・化学・生物)
セフジトレン ピボキシルに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
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1 ペネム骨格を有している。
2 β−ラクタム環のカルボニル基の炭素の求電子性は、一般的な鎖状アミドのカルボニル基の炭素に比べて低くなっている。
3 細菌中のペプチドグリカン合成酵素との間で、β−ラクタム環の開環を伴って共有結合を形成することにより、細胞壁の生合成を阻害する。
4 セフジトレンのカルボキシ基を構造修飾することにより、経口吸収性が改善されたプロドラッグである。
5 生体内での加水分解反応によって、セフジトレン、酢酸及びピバル酸(2,2−dimethylpropanoic acid)を生じる。

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問 210    
問 211    

 e-REC解説

問210 解答 1、2

1 正
一般に抗菌薬を投与する場合には、耐性菌の出現防止のため、症状の有無にかかわらず処方された日数分を飲み続ける必要がある。

2 正
本剤のようなピボキシル基を有する抗生物質を小児(特に乳幼児)に投与すると、低カルニチン血症があらわれることがある。そのため、痙れん、意識障害等の症状が現れた場合は、投与を中止し、すぐに医療機関を受診するように説明する。

3 誤
セフジトレン ピボキシルの副作用として腹痛や下痢が起こることがあるので、それらの症状が現れた場合は、適切な処置を行う必要がある。また、血便や頻回の下痢が現れた場合は、重大な副作用である偽膜性大腸炎を起こしている可能性があるので、それらの症状が現れた場合は、直ちに投与を中止し受診するように説明する。

4 誤
本剤の服用により尿が赤くなることは報告されていない。なお、服用することにより尿が赤くなる抗菌薬としてはセフジニルがあげられる。

5 誤
本剤には、甘味成分のある添加物をつけてあるが、有効成分自体に苦味を感じることがあると説明する。


問211 解答 3、4

1 誤
セフジトレン ピボキシルはセフェム骨格を有している。
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2 誤
β−ラクタム環のような環状アミドは、4員環構造をしているため、角度ひずみが大きく、鎖状アミドと比較すると反応性が高い。したがって、β−ラクタム環のカルボニル基の炭素の求電子性は、一般的な鎖状アミドのカルボニル基の炭素に比べて高くなっている。

3 正
β−ラクタム系抗生物質は、細菌中のペプチドグリカン合成酵素(トランスペプチダーゼ(PBP))のセリン残基のヒドロキシ基とβ−ラクタム環のカルボニル炭素が共有結合することにより、酵素を失活させて細菌の細胞壁の生合成を阻害する。
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4 正
セフジトレン ピボキシルは、活性本体のセフジトレンがもつカルボキシ基をエステル化することにより脂溶性を増大させ、消化管粘膜透過性を上げることで経口吸収性を高めたプロドラッグである。
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5 誤
本剤は、経口投与後に腸管壁のエステラーゼにより加水分解される。その際、構造中の2つのエステル構造が加水分解され、セフジトレン、メタンジオール、ピバル酸が生成する。この際、メタンジオールは脱水反応が進行し、ホルムアルデヒドが生成する。
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