平成30年度 第103回 薬剤師国家試験問題
一般 理論問題 - 問 105

Pin Off  未ブックマーク    |  |  |   
問 105  正答率 : 66.8%

 国家試験問題

国家試験問題
図は、タンパク質加水分解酵素キモトリプシンの酵素活性部位における相互作用を模式的に示したものである。この図に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
スクリーンショット 2018-08-15 13.34.57.png


1 His 57とSer 195との間の相互作用は、Ser 195のヒドロキシ基の求核性を高めている。
2 Asp 102とHis 57との間の相互作用はHis 57のイミダゾリル基の塩基性を低下させている。
3 疎水性ポケットと基質タンパク質との間の相互作用は、酵素の基質特異性を高めている。
4 Ser 195のヒドロキシ基は、基質タンパク質をプロトン化することによって、ペプチド結合の切断を容易にしている。

 解説動画  ( 00:00 / 10:57 )

限定公開

 ビデオコントロール

 解説動画作成を要望!

 解答を選択

問 105    

 e-REC解説

解答 1、3

タンパク質分解酵素のキモトリプシンは、セリンプロテアーゼの一種であり、主に芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンなど)におけるカルボキシ基側のペプチド結合(アミド結合)を加水分解する酵素である。

1 正
His 57とSer 195との間の相互作用において、His 57のイミダゾリル基が塩基触媒として働き、Ser 195のヒドロキシ基のH(プロトン)を受け取り、となりの酸素原子が負電荷を帯びることで、Ser 195のヒドロキシ基の求核性を高めている。
また、負電荷を帯びたヒドロキシ基は、基質タンパク質のカルボニル炭素に対して求核的に反応し、ペプチド結合(アミド結合)を切断する。
スクリーンショット 2018-08-15 13.36.27.png


2 誤
Asp 102とHis 57との間の相互作用において、Asp 102のカルボキシラートイオンは、His 57のプロトン化されたイミダゾリル基の正電荷を安定化させている。よって、Asp 102とHis 57との間の相互作用はHis 57のイミダゾリル基の塩基性を低下させているわけではない。

3 正
基質タンパク質は、自身がもつ芳香環が疎水性ポケットに結合することにより固定されている。固定されることにより基質タンパク質のペプチド結合とSer 195のヒドロキシ基が空間的に近くなるため、加水分解反応が起こりやすくなる。そのため、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンなど)を部分構造に有する基質タンパク質は、酵素の基質特異性を高めていると考えられる。
スクリーンショット 2018-08-15 13.37.31.png


4 誤
Ser 195のヒドロキシ基は、His 57のイミダゾリル基をプロトン化しているが、基質タンパク質をプロトン化しているわけではない。(解説2参照)

 Myメモ - 0 / 1,000

e-REC 過去問解説システム上の [ 解説 ] , [ 解説動画 ] に掲載されている画像・映像・文章など、無断で複製・利用・転載する事は一切禁止いたします